生成AIを巡る著作権訴訟は「まだ序章」:学習データの正当性を問う声が拡大
TechCrunchはOpenAIやStability AIなどを相手取った著作権訴訟の広がりを報じた。争点はWeb上の著作物を無断学習することが「フェアユース」に当たるか否か。専門家は訴訟の波は始まったばかりで、企業のAI活用リスクが高まっていると警告している。
生成AIの爆発的な普及とともに、毎日のように新たな訴訟が提起される事態になっています。
マイクロソフト、GitHub、OpenAIは、コード生成AI「Copilot」がライセンス表示なしにオープンソースコードを出力したとして集団訴訟を起こされています。画像生成ツールのMidjourneyとStability AI、DeviantArtも、ネット上の画像を無断学習したとしてアーティストから提訴されました。さらに大手ストックフォトのGetty Imagesも、数百万枚の画像を無断使用されたとしてStability AIを相手取り法的措置を取りました。
調査会社PitchBookによると、生成AI分野は2022年11月までに13億ドルの資金を調達したものの、法的な不確実性がビジネスの現場を直撃し始めています。
「作風」の著作権とアルゴリズム破棄の影
争点となっているのは、AIモデルが学習データをそのまま、あるいは一部を忠実に再現してしまう傾向です。学術研究でもDALL-E 2やStable Diffusionが学習画像を複製出力する事例が確認されており、米CNETでは解説記事作成AIが人間の書いた記事を盗用していたことが発覚しました。
ファンタジー風景画で知られるグレッグ・ルトコフスキ氏のように、プロンプトに名前を入力されることで自身の作風そっくりの画像が大量生成され、収入が脅かされているクリエイターも抗議の声を上げています。
しかし、法廷で勝訴するのは簡単ではありません。知的財産専門の弁護士エリアナ・トーレス氏は、生成物が原画像と完全一致しない限り立証は難しく、現行法では「作風やスタイル」を著作権で保護することはほぼ不可能だと指摘します。また、学習データセットを作成した非営利組織LAIONに責任の所在があるのではないかという議論もあります。
AI企業側は米著作権法の「フェアユース(公正利用)」を主張していますが、BNH.aiの共同創業者アンドリュー・バート氏はより厳しい見方を示しています。米連邦取引委員会(FTC)が不適切に収集したデータで開発されたアルゴリズムの破棄を命じる「アルゴリズム・ディスゴージメント」を執行した前例に触れ、生成AIモデルも同様の処分を受ける可能性があると警告しています。
自衛策に走る業界:オプトアウトとライセンス契約
法的なリスクの高まりを受け、各社は対策を急いでいます。
Stability AIは、HaveIBeenTrained.comを通じて次世代モデルの学習対象から自らの作品を除外できるオプトアウト機能を導入する計画です。一方のOpenAIはオプトアウトではなく、Shutterstockなどの画像ライブラリと提携して正規ライセンスを取得する方針をとっています。
GitHub Copilotは、提案コードが公開コードと約150文字一致した場合に非表示にするフィルターを導入しました。しかし、これにより必要なコードが欠落するなどの弊害も出ています。企業利用においては、商用利用前に類似画像検索を行うことや、米国立標準技術研究所(NIST)のAIリスクマネジメント枠組みの導入が推奨されています。
なぜ重要か
ビジネスで生成AIを利用するユーザーや開発者にとって、現在は法的地雷原を歩くような状況です。商用プロダクトにAI生成物を組み込んだ場合、意図せず著作権侵害に問われるリスクが現実味を帯びてきました。有料プランと無料プランで規約上の権利保護が大きく異なるサービスも多いため、商用導入に際してはツールの利用規約を精査し、事前検証を徹底するべきだと私たちは考えます。
業界全体から見れば、ネット上のあらゆる公開データを無償で吸い上げて学習させる時代は終わりを告げつつあります。もし裁判でフェアユースが退けられたり、データ収集の違法性が認められれば、巨額のライセンス費用を支払える大手テック企業だけが生き残る寡占化が進む可能性があります。
Stability AIのオプトアウト方式は、権利者側に除外申請の手間を押し付ける形になっており、批判を完全に沈静化させるのは難しいと見られます。長期的にはOpenAIのように正規ライセンスを結ぶアプローチの方が、法的リスクを抑える上では現実的と言えます。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com