元OpenAI社員12名が意見書提出:営利企業への転換に反対
OpenAIの元従業員12名がイーロン・マスク氏の訴訟を支持する法廷助言書を提出し、同社が計画する営利企業への移行に反対を表明した。非営利組織による統制の放棄は設立時の理念に反し、安全対策の軽視につながると主張している。OpenAI側は非営利部門は存続すると反論した。

かつて「利益よりも人類への貢献を最優先する」と誓い、Googleなどの巨大テックからの引き抜きを引き留める口実にしていた非営利の看板を、いざ自ら下ろそうとしたとき、最も信頼していた元従業員たちが反旗を翻しました。
元OpenAIの従業員12人は4月11日、同社が計画している営利企業への転換を阻止しようとするイーロン・マスク氏の訴訟を支持する意見書(アミカス・ブリーフ)を裁判所に提出しました。提出者はハーバード大学法学部教授でクリエイティブ・コモンズ創設者のローレンス・レッシグ氏です。
採用の切り札だった「統治構造」が法廷での証拠に
意見書に名を連ねたのは、過去にもAIの安全性軽視を公に批判してきたダニエル・ココタイロ氏やウィリアム・サンダース氏ら12人です。
彼らは、非営利組織が事業の支配権を手放すことは設立理念の根本的な侵害であり、その理念を信じて参加した従業員や寄付者への裏切りだと主張しています。
意見書によると、OpenAIはGoogleやAnthropicなどの競合と採用で戦う際、非営利支配という独自のガバナンスを「決定的な差別化要素」としてアピールしてきました。引き抜きを断るよう説得する際にも、この仕組みが繰り返し使われたといいます。
さらに2020年末の全社集会で、サム・アルトマンCEOが「短期的な利益よりも安全性と社会全体の利益を優先するために、非営利の統治と監視が極めて重要だ」と社員に熱弁していたエピソードも明かされました。
元社員らは、営利企業になれば安全性への配慮を怠るインセンティブが働き、自分たちより先に安全な汎用人工知能(AGI)を達成したプロジェクトがあれば競争を止めて支援するという設立文書の「合流と支援」条項も反故にされる恐れがあると警告しています。
反論するOpenAI「最強の非営利組織になる」
これに対し、OpenAI側も真っ向から反論しています。
同社広報は、非営利組織自体が消滅するわけではなく理念も変わらないと説明しました。Anthropicやマスク氏のxAIと同じ「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)」への改組を目指しているだけだという主張です。
さらに同社はXで、支配株を手放す対価として数十億ドル規模の資金を得て「世界で最も潤沢な資金を持つ非営利組織を作る準備を進めている」と投稿し、医療や教育、科学分野への慈善投資に充てる方針を示しました。
しかし、今週はカリフォルニア州の労働組合などが「慈善資産の流用」として州司法長官に転換阻止を請願するなど、包囲網は狭まっています。2026年春には陪審裁判が控えているほか、期限内に転換を完了できなければ直近の調達資金の一部を失うリスクも報じられています。
なぜ重要か
AI業界でキャリアを築こうとする技術者や研究者にとって、この出来事は「理想を掲げた研究機関」という物語の終焉を決定づけるものです。巨額の計算資源が必要なフロンティア開発において、営利化を避ける道は実質的に絶たれたことが浮き彫りになりました。
私たちは、今回の元従業員による意見書提出は、マスク氏個人の提訴よりもOpenAIにとって遥かに重い打撃になると考えています。経営陣がかつて内部で「安全の防壁」として非営利構造を保証していた事実が法廷記録に残ることで、州司法長官による審査や将来の陪審員裁判において極めて不利に働く可能性が高いからです。
非営利部門に巨額の資金を持たせて慈善事業をさせるというOpenAIのやり方は、一見すると巧みな妥協案に見えます。しかし、最前線のフロンティアモデル開発に対して非営利理事が直接ブレーキを踏む権限を奪う以上、安全性の担保としては決定的な後退と言わざるを得ません。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com