トランプ大統領、バイデン氏のAI大統領令を撤回 安全審査義務を撤廃へ
トランプ米大統領はバイデン前大統領が2023年に署名したAI規制の大統領令を撤回した。先端AIモデルの公開前に義務付けられていた安全性テスト結果の政府共有などの規制が廃止される。新政権は旧方針が米国の技術革新を阻害していたと主張しており、180日以内に新たなAI行動計画を策定する方針だ。

就任式に駆けつけたシリコンバレーの首脳陣を前に、トランプ新大統領は初日から明確なシグナルを送りました。
トランプ大統領は就任初日に78件に及ぶバイデン政権時代の大統領令を撤回しました。その中で最大の注目を集めたのが、バイデン前大統領が2023年に署名したAI規制に関する大統領令14110号の廃止です。
事前テスト義務を撤廃、安全基準の枠組みを破棄
バイデン政権の大統領令は、先端モデルを開発する企業に対し、国防生産法に基づいて安全性テストの結果を公開前に政府へ提出するよう義務付けていました。あわせて国立標準技術研究所などに、生物兵器やサイバー攻撃への悪用リスクを検証する基準作りを命じていました。
共和党側はこれを「米国の技術革新を縛る官僚的障壁」と批判し続けており、トランプ氏はこの約束を初日に履行した形です。
一方で、バイデン氏が退任直前に署名した、AIデータセンターの電力不足を解消するために国防総省やエネルギー省が所有する連邦用地の開放を促す大統領令については、トランプ氏は撤回せずそのまま維持しました。インフラ支援は残し、モデルへの介入だけを削ぎ落とした格好です。
180日の空白期間と新体制の行方
旧令の破棄に伴い、新たな方針として「イデオロギー的偏向や人為的な社会的意図から解放されたAI」の開発が掲げられました。これはイーロン・マスク氏らが主張してきた「反woke AI」の路線に呼応するものです。
後継となる国家戦略の策定は、AI・暗号資産担当の大統領特別顧問に起用された元PayPal幹部で投資家のDavid Sacks氏に託されました。同氏率いるチームには180日以内に新たな行動計画を取りまとめることが求められています。
非営利団体の責任あるイノベーションのためのアメリカ人(ARI)のエリック・ガストフレンド事務局長は、今回の措置は新政権が本格的な戦略を実行に移すまでの「プレースホルダー(暫定措置)」であるとの見方を示しています。
就任式にはマスク氏をはじめ、ジェフ・ベゾス氏、マーク・ザッカーバーグ氏、ティム・クック氏、ショウ・ジ・チュウ氏、スンダー・ピチャイ氏、サム・アルトマン氏らが出席しており、テック界の期待感が色濃くにじむ船出となりました。
なぜ重要か
最先端の基盤モデルを開発する現場にとっては、公開前にワシントンの審査を待つ必要がなくなり、リリースまでのスピードが劇的に向上します。コンプライアンス対応に追われていた開発リソースをそのまま開発競争に投入できるようになります。
しかし、これにより国際的な規制の分断は決定的なものになりました。EUが厳格なAI法による包括的な規制を推し進める一方で、最大の輸出国である米国が安全審査を企業の自主判断に差し戻したため、グローバル展開を目指す企業は真っ向から対立する2つのルールに対応しなければなりません。
開発を縛る首輪を外した今回の判断は、中国などとの競争を勝ち抜く上では極めて実利的な一手に見えます。ただし、Sacks氏の代替案が出るまでの180日間は実質的な規制の空白期となります。自律的な安全管理が機能せず重大なインシデントが起きれば、結果としてAI業界全体の社会的信頼を大きく損なうリスクを孕んでいます。
情報源 (4)
- reuters.com(新しいタブで開きます)原文reuters.com
- siliconangle.com(新しいタブで開きます)報道siliconangle.com
- usatoday.com(新しいタブで開きます)報道usatoday.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com
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