OpenAIがスーパーボウル広告を放映:「知能の時代」の到来を宣言
OpenAIはスーパーボウルで初となるテレビ広告を放映し、「知能の時代」の到来を掲げました。ChatGPTの利用者が3億人を突破し、利用者の10人中8人近くが35歳未満であることも公表。制作陣はSoraを映像ブレインストーミングに活用したと明かしています。

今年のスーパーボウルの中継を見ていた人なら、ビールのCMに混じって流れた異色の60秒アニメーションに目を留めたかもしれません。点描画のような光の粒が、火の発見から車輪、蒸気機関、DNAの二重らせんへと形を変え、最後にスマートフォンの中のChatGPTへと結びつく映像です。
これはOpenAIにとって初となるテレビCMです。The Vergeの報道によると、前半枠の放映権料だけでおよそ1400万ドルを投じたといいます。
狙いは明確です。全米約1億3000万人の視聴者に向けて、サム・アルトマンCEOが提唱する「知能の時代」の幕開けを告げ、AIを火やインターネットと並ぶ人類の道具の進化として位置づけることでした。
AGIの言葉を隠し、最終映像は人間の手で制作
興味深いのは、その見せ方と制作プロセスの周到さです。
OpenAIの社是はAGIや超知能の実現ですが、新任CMOのケイト・ローチ氏が主導したこのCMでは、それらの言葉は完全に封印されました。画面で描かれたのは、事業計画の作成や語学の個別指導といった、身近で実用的なシーンばかりです。
さらに制作体制にも明確な意図が見られます。アイデア出しやカメラワークの検証といった初期の構想段階では自社の動画生成AI「Sora」が活用されたものの、実際に放映された最終アニメーションは、すべて人間のクリエイターの手で制作されました。AIが生成した映像は最終カットに一切残されていません。
背景にあるのは他社の失敗です。Googleが昨年の五輪中継で、ファンレターの代筆をGeminiに任せるCMを流して猛反発を浴び、放映中止に追い込まれた一件は記憶に新しいところです。AIが人間の感性を奪うという批判を避けるため、OpenAIは徹底して「人間の創造性を支援する道具」という姿勢を崩しませんでした。
あわせて公表された利用データも強烈です。ChatGPTの全世界のユーザー数は3億人を突破し、1月には米国の成人7人に1人が利用しました。利用者の約8割は35歳未満です。1億人に達するまでNetflixが約10年、フォートナイトが約1年かかったのに対し、ChatGPTはわずか2カ月でした。
なぜ重要か
1400万ドルという巨額の広告費は、同社が直面するシビアなビジネス目標と直結しています。
同社は現在3000億ドルの評価額を目指して動いており、年内の売上高目標は116億ドルと報じられています。これだけの数字を達成するには、テック愛好家だけでなく、これまでAIに触れてこなかった膨大な一般層を一気にユーザーへ引き込む必要があります。
スーパーボウルではGoogleもGeminiのCMを打ち、Metaもスマートグラスの宣伝を流すなど、まさに主戦場と化していました。その中でAGIといった仰々しい言葉を避け、日常の道具としての実用性に絞ったOpenAIの立ち回りは、大衆向けアプローチとして非常に手堅いと私たちは考えます。
ただ、気になる点も残ります。自慢の動画生成AIであるSoraを持ちながら、最も重要な大舞台の映像を人間の手作業に頼らざるを得なかった事実は、生成AIの品質や信頼性がプロの現場の要求水準に達しきっていない現状を、図らずも自ら示してしまったとも解釈できます。
火や車輪と同じ歴史の転換点だと堂々と名乗りを上げた以上、単なる便利ツールの枠を超えて、本当に社会のインフラとして定着できるのかが問われるのはここからです。
情報源 (2)
- openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com