米連邦判事、OpenAIの「NYT」著作権訴訟却下申し立てを退ける
米連邦地裁のシドニー・スタイン判事は、著作権侵害の訴えを時効により却下するよう求めたOpenAIの申し立てを棄却した。OpenAI側は「NYTの2020年の報道時点で訓練データの収集は周知の事実だった」と主張したが、判事は製品公開前に出力での複製を予見できた証拠はないとし、主張を藁人形論法と退けた。

あるメディアが、ネット上のデータを大量に収集して AI を開発しているスタートアップを取材したとします。その数年後、そのスタートアップが自社の記事をほぼそのまま吐き出す製品を公開しました。著作権侵害で訴訟を起こしたところ、相手は「あなた方が自ら書いた記事で知っていたはずだ。今さら訴えるのは時効だ」と反論してきました。
OpenAI が The New York Times(NYT)から起こされた著作権訴訟で展開したのは、まさにこうした主張でした。しかし、米連邦地裁の裁判官はこれを受け入れませんでした。
原告の署名記事を「免責の盾」にした OpenAI
発端は 2023 年 12 月に NYT が OpenAI を提訴したことです。訴状では、ChatGPT の出力結果が同紙のニュース記事をほぼそのまま再現しており、重大な著作権侵害に当たると主張されていました。
これに対し OpenAI は、出訴期限(時効)が過ぎているとして訴訟の棄却を申し立てました。
OpenAI が根拠として持ち出したのは、NYT が 2020 年 11 月に自ら報じた 1 本の記事でした。その記事の中で同紙の記者は、OpenAI がインターネット上の 1 兆語に及ぶデータを分析していると報じていました。
OpenAI 側は、NYT のような「洗練された大手パブリッシャー」であれば、自社の報道時点で自社記事が学習に使われていることを把握できたはずだと主張しました。さらに、当時の他の報道からもそれは公知の事実であり、知った時点で速やかに対処する義務があったと論陣を張りました。
裁判官が一蹴した「藁人形論法」
しかし、シドニー・スタイン米連邦地裁判事は金曜日、OpenAI の請求を棄却しました。
決定文の中でスタイン判事は、NYT が 2022 年 11 月の ChatGPT 正式公開より 2 年も前に権利侵害を予見できたと証明する責任は OpenAI にあると指摘しました。そして、OpenAI はその立証責任を全く果たせていないと結論づけました。
判事は、同紙の記者が訓練手法について触れていたからといって、将来的に ChatGPT が記事の表現をそのまま再現する製品になると同紙が認識できた証拠にはならないと説明しました。
さらに、NYT ほどの組織なら直ちに行動すべき義務があったとする OpenAI の主張を「藁人形論法」と断じました。判事によれば、大規模なデータ収集を報じた記事が存在していたとしても、今回問題視されている特定の著作物の複製や具体的な侵害行為を事前に察知させる根拠にはならないとのことです。
なぜ重要か
OpenAI は出訴期限という形式的な手続き論を使って、面倒な著作権訴訟を早期に終わらせようと目論みましたが、その思惑は完全に外れました。これにより、学習データの利用や類似したテキスト出力が正当な「フェアユース」に当たるのかという、核心部分での真っ向勝負が避けられなくなりました。
OpenAI のこの主張は、かなり無理筋に見えます。ネット上から文章を収集していると公表することと、そのモデルが将来特定の著作物を不正に再現することは全く別の問題です。もしこの理屈が通ってしまえば、AI 開発企業は「ネット全体を学習した」と事前に一度アピールするだけで、あらゆる権利者の提訴期間を製品公開前から一方的に削り取れることになってしまいます。
パブリッシャーやクリエイターにとって、この判断は大きな安心材料です。未公開のモデルが水面下で何を行っているかを予測して先手を打つ義務はなく、一般に公開され、具体的な被害が確認されてからでも法的な対抗措置は十分に間に合うという常識的な線引きが示されたと言えます。
情報源 (1)
- arstechnica.com(新しいタブで開きます)原文arstechnica.com
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