OpenAI、削除済み会話を含む全ChatGPTログの保存命令に異議申し立て
OpenAIは削除された会話やAPI記録を含む全ChatGPTログの保存を命じた裁判所命令の取り消しを求めた。ニューヨーク・タイムズ等の著作権訴訟原告が証拠隠滅を主張したことを受けた命令だが、OpenAIは数億人のユーザーのプライバシーを脅かすと反論している。

ChatGPTで会話を削除しても、実際には消えていないかもしれません。米国の裁判所がOpenAIに対し、削除済みログを含む全データの保存を命じたためです。
OpenAIは現在、著作権侵害訴訟を起こしている報道機関側からの申し立てを受け、ChatGPTの全ユーザーログを保存するよう命じた裁判所命令の取り消しを求めて争っています。対象には、ユーザーが意図的に削除したチャットや、APIを通じて送信された機密性の高いやり取りも含まれています。
OpenAIは裁判所に提出した申立書の中で、この命令を阻止するための口頭弁論を要求しました。十分な根拠もないまま下された前例のない命令であり、世界中の何億人ものプライバシーを危機にさらしていると反論しています。
削除したチャットまで強制保存へ
問題の発端は、5月13日に出された裁判所命令です。
オナ・ワン判事はOpenAIに対し、通常であれば削除されるはずの出力ログデータを今後の裁判所の指示があるまで保持し、隔離するよう命じました。
この命令の影響範囲は極めて広範囲です。ChatGPTの無料版、Plus、Proの一般ユーザーだけでなく、APIを利用してサービスを構築している企業ユーザーも対象に含まれるとOpenAIは説明しています。OpenAIは木曜日、誰が影響を受け、データがどのようにアクセスされる可能性があるかを説明するFAQを公開しました。
ペイウォール回避の証拠隠滅を警戒
この命令を求めたのは、OpenAIを著作権侵害で訴えているニューヨーク・タイムズをはじめとする報道機関各社です。
原告側は、OpenAIが「証拠隠滅」を行っていると主張しました。ユーザーが有料記事のペイウォールを回避するためにChatGPTを利用した場合、足取りを消すために検索履歴をすべて削除する可能性が高いというのが原告側の言い分です。
これまでにOpenAIが提出したログは、ユーザーが保存に同意したサンプルデータに限られていたため、原告は肝心の証拠が失われていると訴え、裁判所も命令なしでは削除が続くと判断しました。
これに対しOpenAIは、原告の当てずっぽうな推測だけに基づいて裁判所が拙速に命令を下したと批判しています。報道機関側が全ログ保存の切実な必要性を証明できるまでは、命令を破棄すべきだと主張しています。
なぜ重要か
この問題は、AIの著作権争いが一般ユーザーや企業のプライバシー領域に踏み込んできたことを意味します。
ユーザーや開発者にとって、画面上で「チャットを削除」しても司法の介入によってデータが保全され続けるリスクが現実になりました。特にOpenAIのAPIを利用して機密情報や自社データを扱っている企業にとって、ログが強制的に留め置かれる事態はコンプライアンス上の大きな懸念事項です。
業界全体にとっても、誰かが規約違反をしたかもしれないという推測だけで数億人規模の削除ログを凍結させる判例は、あまりに乱暴に見えます。
OpenAIがここで徹底抗戦に出たのは賢明な判断と言えます。一度この前例を許してしまえば、今後あらゆる生成AIサービスにおいて「プライバシー保護設定」の信頼性が根底から崩れ去るおそれがあるからです。
情報源 (1)
- arstechnica.com(新しいタブで開きます)原文arstechnica.com