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業界動向

NYTの2000万件データ開示要求を拒否、OpenAIが端末側暗号化を表明

公開 拡散指数 46

OpenAIはニューヨーク・タイムズによるChatGPTの個人会話2000万件の引き渡し要求に異議を申し立てた。有料記事の回避利用を調べるという同紙の要求をプライバシー侵害と批判。対抗措置として、OpenAI自身も閲覧不能になる端末側暗号化の開発を進めている。

NYTの2000万件データ開示要求を拒否、OpenAIが端末側暗号化を表明
画像:openai.com

あなたがChatGPTに打ち込んだ個人的な悩みや相談内容が、ある日突然、大手新聞社の弁護士チームに閲覧されるかもしれません。

SFのような話ですが、いま法廷で現実に起きている争いです。

OpenAIの最高情報セキュリティ責任者であるDane Stuckey氏は、ニューヨーク・タイムズによるプライバシー侵害に抵抗する声明を発表しました。同紙がOpenAIを相手取った著作権侵害訴訟の中で、ユーザーの私的な対話ログ2000万件の提出を裁判所に要求しているためです。同紙の主張は、ChatGPTを使って自社の有料記事のペイウォールを突破した形跡がないか調べるため、というものです。

14億件から2000万件へ、激化する法廷闘争

ニューヨーク・タイムズが対話ログの開示を迫ったのは今回が初めてではありません。

OpenAIによると、同紙は以前、ユーザーが私的な会話を削除できないようにすることを要求したほか、過去には14億件もの会話データの提出を求めてきた経緯があります。OpenAIはいずれも拒否してきました。

今回の2000万件は、2022年12月から2024年11月までの期間から無作為抽出された一般消費者向けアカウントの会話です。同紙側の弁護士は、別の訴訟で競合AI企業が500万件の私的ログ提出に応じた前例を挙げ、今回の要求も妥当だと主張しています。

OpenAIは、同紙の記事テキストを含む会話だけをピンポイントで検索して渡す案や、利用傾向を分類した統計データを提供する代替案を出しましたが、いずれも拒否されました。

なお、対象は一般の消費者向けサービスのみです。ChatGPT Enterprise、Edu、Business、およびAPI経由のデータは今回の対象に含まれていません。

クライアントサイド暗号化の前倒し

OpenAIは裁判所への異議申し立てを継続する方針です。万が一提出を命じられた場合でも、個人を特定できる情報やパスワードなどを事前に完全にスクラブ除去するとしています。

さらに、閲覧できるのは外部の代理人弁護士と技術コンサルタントのみに限定し、厳格な保護環境でのみ開示する方針です。

同時に、OpenAIはセキュリティ開発ロードマップを前倒しし、ChatGPTのメッセージに「クライアントサイド暗号化」を導入すると発表しました。端末側で暗号化されれば、OpenAI自身ですら内容を復号できなくなります。

なぜ重要か

私たちは、今回の対立がAI企業の著作権紛争を、一般ユーザーのプライバシー問題へと変質させたと考えています。

一般ユーザーにとって、これは明確な警鐘です。エンタープライズ契約を結んでいない個人向けサービスでは、過去のプロンプトが法的な証拠開示手続きに巻き込まれるリスクが常にあります。クライアントサイド暗号化が実装されるまでは、極めて機密性の高い情報やプライベートな内容を入力することは避けるべきです。

業界全体にとっても、この手法は見過ごせません。著作権者が侵害の立証を口実に数千万件規模の第三者の会話ログを要求できる前例ができれば、あらゆる生成AIプラットフォームが同様の開示請求にさらされることになります。

OpenAI側の対応は巧みです。この要求を公に告発することで、自社が抱える著作権問題の議論を、数億人のプライバシーを守る戦いへとすり替えることに成功しています。同時に、以前から要望の多かった暗号化機能の導入を正当化する強力な契機にもなっています。

情報源 (1)

  1. [1]
    openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com

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