「マスク対アルトマン」訴訟、陪審員が時効を理由に請求を全面棄却
イーロン・マスク氏が OpenAI のサム・アルトマン CEO やマイクロソフトを訴えていた裁判で、陪審団はすべての請求を棄却した。慈善信託違反などの訴えは時効を迎えていると判断され、裁判官もこれを受理。マスク氏は X で形式的な判断にすぎないと反論し、控訴を明言した。

3週間にわたってシリコンバレーの注目を集めた裁判は、陪審員によるわずか2時間の評議であっけなく幕を閉じました。
カリフォルニア州オークランドの連邦地方裁判所において、諮問陪審員はElon Musk氏がOpenAIのSam Altman CEO、Greg Brockman社長、およびMicrosoftに対して起こした訴訟のすべての請求を満場一致で棄却しました。理由は、慈善信託違反や不当利得返還などの請求がすでに公訴時効(出訴期限)を過ぎていたためです。Yvonne Gonzalez Rogers連邦地方判事はこの評決を受け入れました。
Musk氏はX上で直ちに控訴する意向を表明し、今回の判決は本質的な判断ではなくカレンダー上の技術的な問題にすぎないと反論しています。
法廷で暴かれた泥沼の内幕
Musk氏は、OpenAIが本来の非営利目的から逸脱し、自身の寄付金が私利私欲のために流用されたとして1000億ドル規模の損害を主張していました。しかし公判が進むにつれ、浮き彫りになったのはAIの崇高な倫理ではなく、泥沼の主導権争いでした。
OpenAI側の弁護団は、Musk氏自身が2017年の段階で営利子会社の設立を後押しし、自らが単独で完全な支配権を握ろうとしていた証拠を提示しました。寄付の停止をちらつかせたり、テスラ車を配ったりして説得を試みていた事実が明かされたのです。
さらにBrockman社長の証言により、Musk氏が2017年にAndrej Karpathy氏やIlya Sutskever氏を含むOpenAIのトップ研究者をテスラ本社に呼び出し、Autopilotチームの支援を無償でさせていたことも判明しました。非営利組織のリソースを私企業に流用していたという点では、Musk氏自身も同じ穴の狢だったことが陪審員の心証に大きく影響したと見られます。
なぜ重要か
私たちとしては、この判決によってOpenAIとMicrosoftが抱えていた最大の法的リスクが解消され、開発ロードマップの不確実性が大幅に後退したと評価しています。OpenAIのAPIやモデルを利用している開発者や企業にとっても、突然の組織解体や権利関係の混乱といった最悪のシナリオが消え去ったことは好材料です。
しかし、この結末には業界全体として物足りなさも残ります。陪審員が時効という手続き上の理由で判断を打ち切ったため、「巨額の資金が流入した非営利AI団体が、どの程度まで営利化を許されるのか」という本質的な法解釈の先例は作られませんでした。
Musk氏の法廷戦略は、結果として裏目に出たように見えます。過去の生々しいメッセージや私利私欲の駆け引きが白日の下に晒されたことで、理念のための戦いというよりは、自身が立ち上げた競合xAIを有利にするための怨恨劇という印象を強めてしまいました。法廷闘争は控訴審へ持ち越される見込みですが、初戦での全面敗訴はMusk氏側にとって極めて重い打撃と言えます。
情報源 (2)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com