米俳優組合、ゲームのAI利用合意案を公表 リアルタイム生成は最低報酬の7.5倍に
米映画俳優組合(SAG-AFTRA)はゲーム会社との暫定合意の詳細を明らかにした。生成AIの無断利用を防ぐため、音声や肖像の利用には本人の同意を必須とし、ゲーム内のリアルタイム生成対話AIなどに使う場合は最低基準の7.5倍の報酬を支払うよう義務付けた。320日間に及ぶストライキの末にルールが明文化された。

320日間にわたる長期ストライキの末、ゲーム業界の出演者たちとパブリッシャーの間で合意の糸口が見えてきました。
米国の俳優組合SAG-AFTRAは、インタラクティブ・メディア協定に関する暫定合意の骨子を発表しました。今回のストライキは、生成AIによる権利侵害への懸念が唯一の引き金となったものです。組合の全国委員会はこの暫定案を承認し、組合員による批准投票へ進めることを決定しました。
リアルタイムAI生成には基本給の7.5倍以上
合意案で最も注目されるのは、AI利用に対する厳格な制限です。
ゲーム企業が出演者の声、容貌、身体の動きをAI学習に用い、デジタルレプリカを作成する場合、本人の十分な情報に基づく同意が義務付けられます。さらに、将来ストライキが発生した際には、デジタルレプリカの利用同意を一時停止できる権利も確保されました。
金銭面でも新たな基準が設けられました。組合適用枠の演技からデジタルレプリカを作る際の最低報酬が設定され、ゲーム内のチャットボットのようにリアルタイムで音声を生成する用途の場合、出演者には基本最低レートの少なくとも7.5倍の報酬が支払われます。
AI以外の待遇改善も盛り込まれました。批准時に報酬が一律で15.17パーセント引き上げられ、今後3年間にわたり毎年11月に3パーセントずつ追加で引き上げられます。健康保険や年金への拠出率も現行の16.5パーセントから17パーセントへ、さらに2026年10月には17.5パーセントへと段階的に引き上げられます。
安全対策としては、危険な撮影やリハーサルの現場に医療従事者の配置が義務化されたほか、リモートオーディションで危険なスタントを要求することが禁止されました。条文の全文は6月18日に公開され、対象メンバーによる批准投票は太平洋時間7月9日午後5時に締め切られます。
なぜ重要か
今回の合意で賢明だったのは、技術を頭ごなしに拒絶するのではなく、適切な対価と主権の確保に照準を合わせた点だと考えます。
生成AIを使ってNPCを無限に対話できるチャットボットに仕立て直す試みは、ゲーム業界の大きなトレンドです。しかし、リアルタイム生成に対して7.5倍の最低料率を義務付けたことで、スタジオ側が人件費削減を目的に安易に生身の声を代替することは難しくなりました。
出演者にとっては、ストライキ中に自身のデジタルレプリカ稼働を差し止められる条項を勝ち取ったことが極めて大きいです。これにより、人間が抗議している間に自分のAIクローンがゲーム内で働き続けるという事態を防ぎ、交渉力を担保できます。
ただし、懸念も残ります。高額な補償基準が定められた結果、大手パブリッシャーは順応できても、中堅やインディー開発者が組合に所属しない声優を探したり、初めから完全合成のノンレプリカ音声を導入したりする動きが加速する可能性があります。7月9日の投票結果次第ですが、この協定はエンタメ産業全体のAIルール作りにおいて重要な試金石となるはずです。
情報源 (1)
- thewrap.com(新しいタブで開きます)原文thewrap.com
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