OpenAIがブラジルで商用展開を開始:サンパウロに拠点、日送信数2.15億件
OpenAIはブラジルのサンパウロに現地チームを立ち上げ、商用展開を開始した。同国はChatGPTの週間アクティブ数で世界トップ3に入り、1日約2.15億件のメッセージが送信されている。API開発者数でも世界2位を誇り、企業版シート数は前年比5倍に達している。

AIの普及といえばシリコンバレーや英語圏の話題と思われがちですが、ブラジルの利用実態は予想をはるかに超えています。
ブラジルでは毎日およそ2億1500万件のメッセージがChatGPTに送信されています。週間アクティブユーザー数で見ても、同国はすでにChatGPTにとって世界第3位の巨大市場です。この熱気を受け、OpenAIは現地での本格的な事業展開に踏み切りました。
OpenAIはサンパウロに現地拠点を新設し、ブラジルでの商業展開を正式に開始しました。単なる営業窓口ではなく、現地の企業や開発者、研究機関、行政機関と直接連携する体制を整えます。
遊びではなく実務でAIを使い倒すブラジル人
新興市場のAI利用は趣味や実験にとどまることが多いという見方を、ブラジルのデータは覆しています。
2026年6月のデータによると、ブラジルの個人アカウントから送信された分類済みメッセージのうち、35%が仕事関連でした。これは世界平均の30%を上回る数字です。さらにその53%は、企画書の作成、データ分析、コード生成など、具体的な成果物の出力をAIに求めていました。
開発者エコシステムの成長も急激です。OpenAIのAPIを利用する開発者数において、ブラジルは世界第2位に位置しています。Codexの利用でも中南米最大規模で、2026年初頭から発表時点までに週あたりのCodexユーザーは11倍以上、日次のインタラクション数は約30倍に跳ね上がりました。
企業向けプランであるChatGPT Enterpriseの契約シート数も前年比5倍に拡大し、ブラジルは同社の世界トップ10の法人市場に浮上しています。
使い方の特徴も見逃せません。ブラジルはChatGPTの画像機能の利用率が世界で最も高く、音声・文字起こし機能でも世界トップ5に入ります。週間音声ユーザー数はこの1年で倍増しました。
大学から公立病院、サンパウロ市役所まで
現地拠点の立ち上げに伴い、OpenAIはブラジル国内で多数の提携を発表しました。
航空工学のトップ校であるブラジル航空工科大学(ITA)にはChatGPT Eduを提供し、推論モデルやCodexの利用クレジットを付与します。また、国立純粋・応用数学研究所(IMPA)やサンパウロ大学医学部附属病院(HCFMUSP)への助成を行い、公立医療システム向けの臨床情報インフラの開発を支援します。
産業面では、リーガルテック企業ENTERと法曹関係者向けのAIリテラシー教育を推進するほか、中小企業支援組織Estímuloと組んで小規模事業者向けの無料モバイル講座を開設します。
さらに、サンパウロ市の公共情報処理企業Prodamと覚書を交わし、行政サービスのデジタル化に向けたAI活用も模索し始めました。
事前の開発者イベントでは、レシフェやリオデジャネイロなど4都市を回り、ハッカソンでは音声で自社の事業概要を話すだけで近隣の公共調達案件を抽出する中小企業向け支援ツールが優勝しました。
OpenAIが資金提供した独立研究機関RegLabの推計によると、AIは2030年までにブラジル経済に約1兆レアルの経済効果をもたらす可能性があるとされています。
なぜ重要か
OpenAIがサンパウロに直接拠点を置いた動きは、新興国におけるAIプラットフォーム競争の先手として非常に巧みです。
米国企業は通常、日米欧などの高単価市場に先行投資しがちですが、ブラジルはすでにAPI開発者数で世界2位という巨大な厚みを持っています。若く熱量の高いエンジニアや学生にCodexや推論モデルを早期に定着させることで、競合が本格進出する前にOpenAIのエコシステムで囲い込む狙いが見えます。
また、ポルトガル語圏かつ画像や音声といったマルチモーダル機能を多用する地域文化に直接触れることは、モデルの国際的な改善にとっても貴重な資産になります。現地アーティストやクリエイターと組んで文化的な適合を進めている点は、単なる押し売りではない巧みなアプローチと言えます。
一方で課題となるのは、法人契約の定着と公的プロジェクトの実装スピードです。ブラジルは税制やデータ規制が複雑で知られており、行政や公立病院との実証実験を実際の有償契約や社会実装にどこまで持っていけるかが、今後の成否を分けるポイントになりそうです。
情報源 (1)
- openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com