Nianticが地理空間AIを開発:『Pokémon GO』プレイヤーのスキャンデータを活用
Nianticは『Pokémon GO』などのプレイヤーが撮影した数百万件の現実スキャンデータを基に「大規模地理空間モデル(LGM)」を開発中だと発表した。車が入れない歩行者視点の高精度な3D空間をAIやロボットに理解させる狙いがある。

街中でスマホをかざし、ただポケモンを捕まえるために歩き回っていたデータが、まさか将来のAIの学習素材になるとは、当時のプレイヤーは想像もしていなかったはずです。
Nianticは、プレイヤーがスマートフォンで撮影した数百万件の現実スキャンデータを基に、「大規模地理空間モデル(Large Geospatial Model:LGM)」を構築していることを明らかにしました。対象となっているのは「Pokémon GO」や「Ingress」、そして3Dスキャンアプリ「Scaniverse」のデータです。
同社によると、このモデルはChatGPTがテキストを出力するように、コンピューターやロボットが現実世界を理解し、ナビゲートできるようにすることを目指しています。
車が入れない場所を、人間がくまなく歩いた
このモデルが誇る「空間知能」の土台になっているのは、Nianticが過去5年間にわたって開発を続けてきた「ビジュアル・ポジショニング・システム(VPS)」です。
VPSは、スマホで撮影した1枚の写真から、ゲーム内やScaniverseで作成された3Dマップと照合し、現在地と向きを割り出す仕組みです。
Googleストリートビューのような測定車両と異なり、このデータはすべて「歩行者目線」で集められているのが最大の特徴です。
路地裏や公園の小道など、車が立ち入れない場所のデータが膨大に蓄積されています。
同社のチーフサイエンティストであるVictor Prisacariu氏は2022年の時点で、ユーザーのデータによって物体の3D形状だけでなく、地面や空、木といった意味的理解(セマンティクス)も含む高精度な3D世界地図を構築できたと説明していました。
メディアの404 Mediaも、2016年にPokémon GOを遊んでいた人が、将来自分たちのデータがこうしたAI開発の燃料になるとは夢にも思わなかっただろうと指摘しています。
なぜ重要か
一般ユーザーにとっては、ゲームの楽しさの裏で無報酬のデータ収集員として動かされていた事実を改めて突きつけられた形です。ARタスクのためにカメラを向けた行為がロボット学習に使われていると知れば、今後スキャン機能を気軽に使うのをためらう人も出てくるはずです。
一方でロボティクスや空間コンピューティング業界にとって、この歩行者視点データは喉から手が出るほど欲しい資産です。大手テック企業でも車道以外の細かな歩行空間データを世界規模で集めるのは難しく、Nianticはその盲点をゲーミフィケーションで制覇していました。
ゲーム会社の資産をロボット基盤へと転換させる手腕は極めて賢いといえます。ただし、ゲームプレイ目的で集めた昔のデータをAI学習にどこまで流用してよいのかという点については、利用規約の解釈やユーザー感情の面で議論を呼ぶ可能性がありそうです。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com