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研究

MIT、生成AIで耐性菌を撃退する新規抗菌薬候補を設計

公開 拡散指数 35

MITの研究チームが生成AIを用いて3600万種以上の未知の化合物を設計し、耐性淋菌やMRSAを殺滅する有望な抗生物質候補を発見した。既存薬のマイナーチェンジではなく、まったく新しい分子構造と細胞膜破壊メカニズムで薬剤耐性問題の突破を目指す。

MIT、生成AIで耐性菌を撃退する新規抗菌薬候補を設計
画像:news.mit.edu

耐性菌との戦いにおいて、人類は過去45年間、既存の抗生物質の手直しばかりを続けてきました。その間に細菌は着実に進化し、今や薬剤耐性菌による死者は世界で年間約500万人に達しています。

8月14日付の学術誌「Cell」に掲載されたMITの研究は、この手詰まりを打破する可能性を示しました。ジェームズ・コリンズ教授率いる研究チームは、生成AIを用いて3600万以上の未知の化合物を設計し、難治性の耐性菌を退治する全く新しい抗生物質候補を作り出しました。

既存薬に似ていない分子をゼロから組む

チームはまず、難治性の淋菌を標的としました。約4500万個の化学フラグメントの中から、人体に有害なものや既存の抗生物質に似たものを徹底的に排除し、F1と呼ばれる有望な骨格を特定しました。

次に、CReMとF-VAEという2つの生成AIアルゴリズムを使い、F1をベースに約700万個の完全な分子を生成させました。その中から選ばれた候補薬NG1は、実験室のマウスモデルにおいて耐性淋菌を撃破することに成功しました。

解析の結果、NG1は外膜合成に関わるタンパク質LptAという、これまで使われてこなかった標的を攻撃して細胞膜を破壊していることが判明しました。

ルールを外してAIに任せた2900万の候補

続いてチームは制約をさらに外し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を標的に、AIへ自由な分子設計を指示しました。化学的に成立する結合ルールだけを守らせた結果、生成された化合物は2900万種類を超えました。

絞り込みを経て実際に合成・試験できた22種類のうち、6種類が強力な抗菌力を示しました。その代表格であるDN1は、マウスのMRSA皮膚感染症をきれいに治癒させました。

現在、非営利組織のPhare Bioがチームと連携し、NG1やDN1の構造改変や前臨床試験を進めています。研究チームは今後、結核菌や緑膿菌への応用も目指しています。

なぜ重要か

今回の成果が際立っているのは、AIを「既存リストの検索ツール」としてではなく、「ゼロから分子を創り出す設計者」として機能させた点にあります。これまでの抗生物質開発は似たような構造の使い回しが多く、耐性を獲得されやすい構造的弱点がありましたが、AIが未知の化学領域から全く新しい作用機序を掘り起こしました。

一方で、このアプローチには現実世界の厚い壁も露呈しています。それは合成の難しさです。チームは最初の試みで80個の有力候補を選びましたが、専門企業が実際に合成できたのはわずか2個だけでした。AIがどれほど魅力的な分子構造を思いついても、リアルの化学者が試験管で作れなければ薬にはなりません。

私たちは、この手法が創薬のゲームチェンジャーになり得る一方で、今後は「作れる構造をAIに学ばせる技術」が勝負の分かれ目になると見ています。患者の手元に届くまではまだ長い時間がかかりますが、耐性菌の包囲網を破るための極めて大きな一歩です。

情報源 (1)

  1. [1]
    news.mit.edu(新しいタブで開きます)原文news.mit.edu

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