Meta、AI著作権訴訟で「ボブ・ディラン弁護」と作家側に揶揄される
作家らは月曜日、MetaがAI訓練用に海賊版書籍データをトレントで一括ダウンロードし、P2Pネットワーク上で他者へ再配布していたとして米連邦地裁に略式判決を求めた。「少し盗めば投獄、大量に盗めば王」という歌詞を引き、Metaの姿勢を強く批判している。5月1日に審理予定。

AIの著作権侵害をめぐる裁判といえば、開発企業側が「モデルの学習はフェアユース(公正利用)に該当する」と主張するのが定石でした。
しかし、Metaを相手取った集団訴訟で、作家側がその防壁を根底から崩しかねない決定的な切り札を突きつけました。Metaが自社モデルの学習データを入手するため、海賊版書籍データベースをBitTorrentでダウンロードしていた事実です。
トレント利用で「海賊版の配布者」に転落したMeta
今週月曜日、原告の作家グループは米カリフォルニア州連邦地裁に対し、直接的な著作権侵害を理由とする略式判決の申し立てを行いました。
申し立てによると、AI開発競争で遅れをとっていたMetaは、海賊版書籍を1冊ずつダウンロードする試みが社内ネットワークを圧迫し遅すぎたため、テラバイト規模の海賊版データセットを一括でトレント取得する方針に転じました。その痕跡を隠すため、通常の社内手順から逸脱してAmazon Web Servicesを利用したとされています。
問題はBitTorrentの仕組みにあります。ファイルをダウンロードする際、ネットワークの仕様上、断片データが他のユーザーへと同時にアップロードされます。ダウンロード完了後のシードを制限していたとしても、ダウンロード中(いわゆるリーフィング段階)に海賊版データを他者へ再配布していた事実は否定できないと原告側は指摘しています。
原告側は、Metaの姿勢をボブ・ディランの楽曲になぞらえて「ボブ・ディラン抗弁」と揶揄しました。「少し盗めば刑務所行きだが、大量に盗めば王様にされる」という痛烈な皮肉です。Metaが取得した海賊版データには、少なくとも10人の最高裁判事の著作まで含まれていました。
社内チャットに残された「会社のPCでトレントはまずい」の証拠
Meta側はこの主張を法廷から排除しようと必死です。新たな専門家証言を認めないよう求めるとともに、十分な反論の機会が与えられていない段階での略式判決は不当だと反論しています。
さらに原告側は、マーク・ザッカーバーグCEOを含む幹部の追加証言録取を求めました。公開された社内メールから、海賊版データの利用リスクが高層部に報告され、ザッカーバーグ氏らの承認を得ていたことが判明したためです。
Meta側はザッカーバーグ氏の証言を拒絶したものの、5月1日の審問を前に従業員6人の証言を認めました。その中には、「会社のノートPCからトレントを使うのはどうも気が引ける」と社内チャットに書き込んでいたソフトウェアエンジニアのNikolay Bashlykov氏も含まれています。
担当のVince Chhabria判事は以前の審問で、「リーフィング」という技術用語を耳にしたことがないと吐露しており、5月1日に予定されている審問でこの仕組みについて双方の議論を精査する見込みです。
なぜ重要か
原告側の狙いは極めて合理的です。「AIの学習がフェアユースか否か」という前例のない難問を飛び越え、すでに20年以上の判例が蓄積されている「P2Pファイル共有による著作権侵害」の土俵にMetaを引きずり下ろしたからです。
米国の著作権法において、P2Pネットワークで無許諾の海賊版データをアップロードした行為がフェアユースと認められた判例は一つもありません。学習済みモデルの是非を問うまでもなく、データ取得の過程で発生した再配布行為そのものを捉えれば、直接侵害の判定を勝ち取れる可能性が高まります。
私たちが注目すべきは、Meta社内におけるコンプライアンスの緩みです。開発スピードを優先するあまり、現場エンジニアが倫理的な違和感を抱いていたにもかかわらず、経営層がリスクを承知で強行した形跡が露呈しました。この論点が裁判所に認められれば、同様にP2Pネットワークからデータを収集していた他のAI開発企業にとっても、フェアユース防衛論が通用しなくなる致命的な打撃となる可能性があります。
情報源 (1)
- arstechnica.com(新しいタブで開きます)原文arstechnica.com
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