本文へスキップ
IFAI

業界動向

米マクドナルド、ドライブスルーのIBM製音声AIテストを終了へ

公開 拡散指数 55

米マクドナルドはIBMと提携して進めていたドライブスルー自動音声注文テストを終了し、2024年7月26日までに100店以上から撤去する方針を固めた。音声AI自体を諦めたわけではなく、年内に別のパートナーを選定して再検討する見通しだ。

米マクドナルド、ドライブスルーのIBM製音声AIテストを終了へ
画像:restaurantbusinessonline.com

ドライブスルーでマイクに向かって注文したら、AIに全く見当違いなメニューを通された。そんなソーシャルメディアで話題になっていた珍騒動に、マクドナルドがひとまず終止符を打ちます。

業界メディアの Restaurant Business が入手したフランチャイズ加盟店向けメールによると、米マクドナルドはIBMと進めていたドライブスルーの自動音声注文テストを終了することを決定しました。現在導入されている100店舗以上のテスト導入店では、遅くとも2024年7月26日までにシステムが停止されます。

IBMとの提携終了、だが音声AI自体は諦めず

マクドナルドとIBMの取り組みは2021年に始まりました。マクドナルドが傘下の技術開発部門 McD Tech Labs をIBMに売却し、自動音声注文(AOT)が店舗オペレーションを簡素化し、提供時間を短縮できるかを検証してきました。

しかし約2年間の実験を経て、マクドナルドは全国展開することなくテストの打ち切りを決めました。車の走行音などの騒音環境や、顧客の多様なアクセントへの対応など、注文精度の低さが課題として指摘されていました。

それでも同社は音声注文そのものを見限ったわけではありません。米マクドナルド最高レストラン責任者の Mason Smoot 氏はメールの中で、今回の実験によって音声注文が将来の店舗運営に不可欠であることを確信できたとし、今年末までに新たな音声ソリューションについて判断を下す方針を示しています。

IBM側も声明を発表し、同社の技術は業界屈指の精度とスピードを誇ると強調した上で、現在は他のファストフードチェーンとも導入に向けた協議を進めていると説明しました。

ファストフード業界の自動化競争、中には「人力AI」も

人件費の高騰や人手不足を背景に、ファストフード大手の自動化意欲は非常に旺盛です。Wendy's や White Castle、Carl's Jr. など多数の競合が音声注文の実証実験や本格導入を進めています。

特に Wendy's はGoogleと手を組み、昨年から開始したドライブスルーAIテストの対象店舗を拡大しています。また、マクドナルド自身も昨年12月にGoogleとの提携を発表しており、ソフトクリームマシンの清掃方法などを店員に教える社内向けチャットボット「Ask Pickles」の導入などが報じられていました。

一方で、業界の無理な自動化推進の歪みも表面化しています。米証券取引委員会への開示情報などから、競合チェーンが採用していたドライブスルーAIの裏側で、実際にはフィリピンのリモートワーカーが手動で注文入力を代行していたことが明らかになり、物議を醸しました。

なぜ重要か

マクドナルドが100店舗規模のテスト段階で立ち止まり、IBMとの契約を打ち切った判断は、極めて賢明だと考えられます。

利用者の視点に立てば、ドライブスルーの価値は迅速さと正確さに尽きます。わずかな人件費削減のために注文ミスを連発し、窓口で顧客をイライラさせては本末転倒です。完成度が不十分な技術を無理に全国展開せず、一旦システムを切るという判断は、来店客の体験を守る上で妥当です。

業界全体にとっても、これは大きな警鐘となります。ファストフードの注文窓口は、屋外のエンジン音、同乗者の話し声、細かなトッピングの変更などが飛び交う、音声認識にとって最も過酷な環境の一つです。海外の人力オペレーターに頼るような見せかけの自動化ではなく、真に実用に耐えうる基盤モデルの能力が問われています。

マクドナルドの今回の動きは撤退ではなく、パートナーの乗り換えと見るべきです。年末に向けてGoogleなど次世代のAI技術を持つプレイヤーと再始動する可能性が高く、ドライブスルーを巡るAI競争はここからが本番と言えます。

情報源 (2)

  1. [1]
    restaurantbusinessonline.com(新しいタブで開きます)原文restaurantbusinessonline.com
  2. [2]

毎日のAIピックアップ