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研究

ハーバード大のAI「TxGNN」:既存薬から1万7000超の希少疾患の治療候補を発見

公開 拡散指数 35

ハーバード医科大学院の研究チームは希少疾患のドラッグリパーパシングに特化したAIモデル「TxGNN」を発表した。約8000種類の既存薬から1万7080の疾患に対する候補薬を特定し、根拠も提示する。臨床医向けに無料公開されている。

ハーバード大のAI「TxGNN」:既存薬から1万7000超の希少疾患の治療候補を発見
画像:medicalxpress.com

TxGNNは、ハーバード医科大学院の研究チームが開発した、希少疾患や未治療疾患に対する「ドラッグリパーパシング(既存薬再開発)」に特化したAIモデルだ。約8000種類の既存薬および治験薬を1万7080件の疾患と照合し、有効な候補薬を探索すると同時に、その処方判断に至った生物学的根拠まで提示する。

世界には7000種以上の希少疾患が存在し、約3億人が罹患しているが、FDA(米食品医薬品局)の承認薬が存在するのはわずか5〜7%にすぎない。新薬を一から開発するには莫大な費用と期間がかかるため、患者数が少ない疾患は後回しにされがちだった。TxGNNは、安全性プロファイルが判明している既存薬から迅速に治療法を見つけ出すアプローチを採る。

何ができるのか

TxGNNは、FDA承認薬と臨床試験中の実験薬を含む約8000種類の化合物を網羅している。対象疾患数は1万7080件に達し、単一のAIモデルが扱える疾患数としては過去最大規模となる。

探索精度においても、従来のドラッグリパーパシング向けAIモデルと比べて平均で約50%高い候補特定能力を示した。さらに、特定の疾患に対してどの薬が副作用や禁忌を引き起こすかを予測する精度も35%向上している。初期の治験で試行錯誤していたリスク要因を、計算段階でスクリーニングできる点が強みだ。

どうやって実現しているのか

従来の創薬AIの多くは、特定の1疾患または少数の一般的な病気を対象に学習されているため、データが極端に少ない希少疾患には適応できなかった。

TxGNNは、DNA情報、細胞内シグナル伝達、遺伝子発現レベル、臨床ノートなどの膨大な生体データを統合し、120万件の患者記録で検証されている。

最大の特徴は、疾患間で共通するゲノム異常や生体メカニズムを見つけ出す点にある。治療法が確立された一般的な病気と、未解明の希少疾患との間にある「共通の分子基盤」を特定することで、既存薬の作用機序を別の疾患へ論理的に応用する。

ブラックボックスを排除した臨床志向

臨床の現場では、いくらAIが高いスコアを出しても、理由が分からなければ医師は患者に投薬できない。TxGNNは候補薬を提示するだけでなく、その判断に至った生物学的理由を明示する説明機能を標準で備えている。

学習データに含まれていない3つの希少疾患(神経発達障害、結合組織疾患、水代謝異常の遺伝性疾患)を用いた検証でも、TxGNNは既存の医学的知見と完全に一致する治療候補薬とその理由を提示してみせた。

成果は9月25日付の『Nature Medicine』に掲載され、ツールは世界中の臨床医や研究者に向けて無料で提供されている。ただし研究チームは、特定された候補薬の投与量や投与タイミングについては追加の臨床評価が不可欠であると注意を促している。

なぜ重要か

TxGNNの価値は、これまで偶然の発見や医師の直感頼みだったドラッグリパーパシングを、体系的な予測技術へと引き上げた点にある。商業的な採算が合いにくく放置されてきた希少疾患の9割以上に対して、現実的な研究の突破口を提供する。

モデルの精度向上にとどまらず、医師が納得できる説明可能性を組み込み、誰でも使えるよう無償公開したハーバードの手法は極めて実践的だ。希少疾患の研究やドラッグディスカバリーに関わる研究者は、今すぐ検証に値する強力なツールと言える。

情報源 (1)

  1. [1]
    medicalxpress.com(新しいタブで開きます)原文medicalxpress.com

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