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研究

ハーバード医科大学がPDGrapher公開:病変細胞を正常化する創薬AI

公開 拡散指数 32

ハーバード医科大学の研究チームは病変細胞を健康な状態へと戻す遺伝子標的や併用薬を特定する無料AIモデル「PDGrapher」を発表した。単一標的の探索ではなく細胞内シグナル経路をグラフ構造で捉え、11種類の癌データで従来より最大25倍高速に予測する。

ハーバード医科大学がPDGrapher公開:病変細胞を正常化する創薬AI
画像:hms.harvard.edu

PDGrapherは、病変した細胞を健康な状態へと逆転させる遺伝子標的や併用薬の組み合わせを予測する、ハーバード医科大学が開発した無料のグラフニューラルネットワークツールです。

従来の創薬スクリーニングは、特定のタンパク質を1つずつ阻害・活性化するアプローチが主流でした。しかし癌や神経変性疾患のような複雑な病気は、複数の遺伝子やシグナル伝達経路が相互に絡み合って病態を維持しているため、単一標的のアプローチでは限界に突き当たることが珍しくありません。

何ができるのか

PDGrapherは、細胞内の遺伝子、タンパク質、シグナル経路の相互作用をグラフ構造としてモデル化します。

まず病変の主因となっている細胞内の重要ノードを特定します。次に、それらのノードの働きを停止させたり抑制したりした場合の影響をアルゴリズム上でシミュレーションし、どの標的を叩けば細胞が健康な振る舞いを取り戻すかを予測します。

無数の化合物を手当たり次第に試すのではなく、健康な状態に戻すために必要な介入を逆算し、最も有望な単一標的あるいは併用標的の組み合わせを直接絞り込みます。

精度と処理速度

研究チームは、治療前後の病変細胞データで学習させたPDGrapherを、訓練時には完全に除外されていた11種類の癌、計19のデータセットでブラインドテストしました。

その結果、未知のデータセットにおいて適切な治療標的を既存の同種AIモデルより最大35%高い順位で正確に特定しました。さらに処理速度においても、比較対象となった手法と比べて最大25倍の高速化を達成しています。

非小細胞肺癌におけるKDRやTOP2Aといった臨床で効果が実証済みの標的も正確に再発見したほか、現在はパーキンソン病やアルツハイマー病、さらにマサチューセッツ総合病院と共同で希少疾患であるX連鎖ジストニア・パーキンソニズムの創薬標的探索にも活用されています。本成果はNature Biomedical Engineeringに掲載され、ツールは無料で公開されています。

なぜ重要か

計算生物学や創薬標的の探索に携わる研究者にとって、PDGrapherは初期スクリーニングのパイプラインに組み込む価値のある強力なツールです。単一分子の総当たり探索から脱却し、ネットワーク全体の因果関係に基づいて多標的の併用候補を絞り込めるため、実験にかかるコストと時間を大幅に削減できます。

もちろん、モデルが示した逆転効果はあくまで計算上の予測であり、実際の細胞や生体内での薬物動態、毒性、オフターゲット効果はウェットラボで検証しなければなりません。それでも、複雑な疾患に対して合理的な多剤併用戦略を設計するための計算基盤として、極めて実用的な一歩と言えます。

情報源 (1)

  1. [1]
    hms.harvard.edu(新しいタブで開きます)原文hms.harvard.edu

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