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研究

GoogleとWHO、AIで感染症流行を予測:4万5500人のリスクを数分で特定

公開 拡散指数 51

GoogleはWHOなどと連携し、衛星画像や人流データを基に感染症流行を予測する「Google Earth AI」の成果を発表した。コンゴ民主共和国のエボラ出血熱対応では、地理空間推論エージェントが数分で48カ所の集落と4万5500人以上のリスク対象者を特定し、従来数週間要した調査を劇的に短縮した。

GoogleとWHO、AIで感染症流行を予測:4万5500人のリスクを数分で特定
画像:blog.google

遠隔地の鉱山地帯で急速に広がるウイルス感染を追跡する作業は、これまで公衆衛生チームが何週間も現地を歩き回って行う手作業でした。また先進国であっても、公的な疾病統計の発表には1年から3年のタイムラグが生じることが珍しくありません。

Googleは10月6日、地球規模のデータを活用する「Google Earth AI」を公衆衛生の現場へ本格導入する取り組みを発表しました。衛星画像や気象情報に加え、プライバシーに配慮した検索トレンドや人流データを基盤モデルに統合し、感染症の事後対応を事前予測へと転換することを目指しています。

数分で4万5000人以上の高リスク住民を特定

今回の実証で最も目覚ましい成果を上げたのが、コンゴ民主共和国(DRC)で続くエボラ出血熱への対応現場です。

世界保健機関アフリカ地域事務局(WHO AFRO)とコンゴ国立生物医学研究所(INRB)のチームは、Googleが開発した地理空間推論エージェントのプロトタイプを活用しました。担当者は複雑なプログラムを書く必要はなく、日常の言葉でAIに対話形式で質問するだけで作業が進みます。

移動が多く感染リスクが高い鉱山回廊を分析したところ、わずか数分で感染リスクにさらされた48の集落と、4万5500人以上の高リスク住民を特定することに成功しました。従来であれば数週間を要していた調査です。この迅速な把握により、移動式検査ラボの先行配備や国境付近の監視強化が即座に実現しました。

この仕組みは他の感染症でも成果を上げています。コンゴ民主共和国でのコレラ流行予測では、最大8週間前に発生しやすい衛生区域を特定できるようになりました。またメキシコでは、オックスフォード大学などが現地の気象モデルと連携させ、デング熱の流行を早期予測してボウフラの駆除作業に役立てています。

人流と検索データを「場所の指紋」へ変換する

この予測基盤を支えているのが、Google Earth AIの人口動態基盤モデル(PDFM)です。

従来の疫学モデルは国境の壁に阻まれがちでした。マウントサイナイ医科大学とボストン小児病院の研究チームは、米国とカナダの国境沿いにある146の郡において、麻疹・風疹などのMMRワクチン接種率の予測精度向上にこのモデルを活用しました。国境を越えた人流や行動データを組み込むことで、モデルの説明力を16%から22%へと36%引き上げ、国境周辺の住民470万人の接種率予測を改善しました。

また米国で年間91万6000人以上の命を奪う心血管疾患について、ニューヨーク大学グロスマン医学部のチームが検証したところ、公的調査データのような2〜3年の遅れなしに、同年の死亡率を従来と同等以上の精度で予測できることが確認されました。

このモデルが生成する毎月更新のデータは「Population Dynamics Insights」としてGoogle Maps Platform上でプレビュー公開されており、適格な研究者には無償提供枠も用意されています。

なぜ重要か

検索や移動のビッグデータを感染症対策に活かす試みは以前からありましたが、今回のGoogleのアプローチは2つの点で実用的だと考えます。

1つ目は、現場の専門家がそのまま使える形に落とし込んだ点です。リソースが限られる感染症の最前線では、高度なAIエンジニアを雇って自前のデータ解析基盤を作る余裕はありません。自然言語で指示を出せるエージェントと、既存モデルに差し込むだけで機能する埋め込みデータを用意したことで、導入のハードルを劇的に下げました。

2つ目は、主権国家の境界線で分断されていた公衆衛生データをつなぎ直したことです。ウイルスの拡散に国境は関係ありません。国境を越えた人々の日常的な動きをプライバシーを守りながら捉えられる点は、既存の統計調査にはない明確な強みと言えます。

一方で課題もあります。スマートフォン普及率が極端に低い地域や通信環境のない場所ではデータの欠落が生じやすく、最も支援を必要とするコミュニティで予測の偏りが出る懸念は残ります。人流データの活用に対するプライバシー保護の懸念も常に付きまといます。

それでも、コレラの発生を2カ月前に察知し、何週間もかかっていた接触追跡を数分の対話に短縮できる価値は極めて大きく、感染症対策に関わる公衆衛生機関にとって試す価値が十分にある取り組みに見えます。

情報源 (2)

  1. [1]
    blog.google(新しいタブで開きます)原文blog.google
  2. [2]
    research.google(新しいタブで開きます)報道research.google

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