FigureがHelix 2.5を発表:事前学習なしで30軒の家庭の家事をこなす
Figureは最新ニューラルネットワーク「Helix 2.5」を発表した。事前データ収集なしでベイエリアの30軒の家庭に入り、おもちゃの片付けやタオル畳み、ベッドメイクをゼロショットで遂行。膨大な人間の行動データによる事前学習で成功率を9%から56%へ引き上げ、スケーリング則の実証にも成功した。

初めて訪れた知人の家でも、私たちは部屋の寸法を測ることなく、脱ぎ捨てられた服を片付けたりベッドを整えたりできます。しかし人型ロボットにとって、家具の配置やベッドの高さが変わる環境の変化は、動作停止に直結する大きな壁でした。
Figureが発表した最新の自律制御モデル「Helix 2.5」は、この課題を正面から突破しようとしています。同社はHelix 2.5を搭載した人型ロボットを米カリフォルニア州ベイエリアの一般家庭30軒に持ち込み、事前のデータ収集や微調整を一切行わない「ゼロショット」の状態で家事タスクを実行させました。
未知の30家庭で家具や洗濯物をそのまま操作
課されたのは、リビングの玩具の片付け、タオルの折りたたみ、ベッドメイキングという3つの全身動作タスクです。これらは移動、把持、柔らかい布の操作、二腕協調を同時にこなす必要があります。
評価基準は極めて厳格で、途中の部分点は認められません。片付けタスクでは散乱した13〜15個の玩具をすべてバスケットに入れ、ベッドメイキングでは枕と掛け布団の角を揃えてシワを伸ばし切らなければ成功と見なされません。
実験に使われた家具やシーツ、玩具は各家庭にある既存のものが使われ、学習データには含まれていませんでした。さらにロボットは、届きにくい位置にある物を取るために自ら後退して立ち位置を変えたり、ベッドの反対側に回り込んでシワを直したりする自己修正能力も見せました。
人間の行動ログから導かれたスケーリング則
この汎化性能を支えているのが、Figureが独自に収集している人間の日常行動データセット「Index」です。前世代のHelix 02が既存の視覚言語モデルをベースにしていたのに対し、Helix 2.5はIndexを用いてゼロから事前学習されています。
同社のアブレーション検証によると、事前学習を行わずゼロから学習したモデルの成功率がわずか9%だったのに対し、Indexで事前学習したHelix 2.5は56%と、6倍以上の成功率を記録しました。なお、事前学習データ全体の中で各評価タスクが占める割合は1.90%以下に抑えられています。
さらにタスク固有の適応に必要なデータ量は従来の半分に抑えられながら、汎化範囲は30軒の家庭へと拡大しました。データを8倍まで増やした検証では、言語モデルと同様に事前学習データ量とロボットの動作予測精度の間に明確なスケーリング則が確認され、最大の学習実行時のテスト損失を小数点以下4桁まで事前に予測できたといいます。
現在、Indexには毎秒約35分相当の人間の行動データが追加されており、FigureはHelixの学習に35億ドル規模の計算資源を投入しています。
なぜ重要か
家庭用ロボットの実用化における最大の障害は、家ごとに異なる環境へ適応するために膨大な現地データ収集が必要だった点にあります。Helix 2.5が示した結果は、人間規模の行動データで基礎を固めれば、環境ごとの微調整なしでも人型ロボットが日常空間に溶け込める可能性を証明しました。
ただし、今すぐ家庭用ロボットが普及段階に入ると考えるのは早計です。学術的には驚異的な数字であるものの、56%の成功率ということは、実生活では約2回に1回失敗することを意味します。一般ユーザーが安心して任せられる家事代行レベルにはまだ距離があります。
Figureの戦略は極めて巧妙だと評価できます。シミュレーション環境での強化学習や場当たり的なルールベース制御から脱却し、大規模言語モデルが成功を収めた「広範な事前学習と軽量な下流適応」の法則を全身ロボティクスへ完全に移植しました。
一方で懸念されるのは、開発競争の急速な寡占化です。35億ドル規模の計算リソースと毎秒拡張される専用データ基盤が前提となるなら、一般のロボットスタートアップが追随するのは極めて困難であり、身体知能の開発は巨大資本の消耗戦へシフトしつつあります。
情報源 (1)
- figure.ai(新しいタブで開きます)原文figure.ai