米裁判所、トランプ政権によるAnthropic排除に差止命令 軍事利用制限めぐる対立で
米連邦地裁は木曜日、トランプ政権がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定し連邦機関との取引停止を命じた措置に対し、差し止めを命じた。自律兵器や大規模監視へのAI利用を拒否した同社に対し、政府が言論の自由を侵害して報復的に排除を試みたと判断された。

自社のAIを自律型兵器や大規模監視に使わせないという原則を貫いた結果、政府から国家安全保障上のリスクとして締め出されそうになった米国のAI企業があります。Anthropicです。
しかし、米連邦地裁がこの動きに待ったをかけました。カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のRita F. Lin判事は木曜日、トランプ政権がAnthropicに対して下していた事実上の排除措置を差し止める仮処分決定を下しました。
兵器利用を拒否し「供給網リスク」に指定された経緯
事の発端は先月起きた、ペンタゴン(米国防総省)とAnthropicの間の利用規約をめぐる対立でした。Anthropicは自社のAIモデルについて、自律型兵器システムや大規模監視活動への利用を禁じる制限条項を盛り込むよう求めました。
これに反発したトランプ政権は、通常は外国の敵対企業に適用される「サプライチェーン・リスク」にAnthropicを指定しました。さらにトランプ大統領は、連邦政府機関に対して同社との取引を停止するよう命じました。
ホワイトハウスは同社を過激な左派でポリティカル・コレクトネスに傾倒した企業だと非難し、米国の安全保障を脅かしていると攻撃しました。AnthropicのDario Amodei最高経営責任者(CEO)は政府の措置を報復的で懲罰的だと批判し、国防総省とヘグセス長官を相手取って提訴していました。
判事「企業を破滅させようとする試みに見える」
Lin判事は審理の中で、政府の措置はAnthropicを機能不全に追い込もうとする試みに見えると指摘しました。
判事は、政府の命令が憲法で保障された企業の表現の自由を侵害していると判断しました。政権側に対し、安全保障上のリスク指定を撤回し、連邦機関に対する取引停止命令を取り下げるよう命じました。さらに政府に対し、命令をどのように履行したかを4月6日までに報告するよう求めています。
Anthropicは声明で、裁判所の迅速な判断に感謝し、本案訴訟でも勝訴する見込みが高いと認められたことを歓迎すると表明しました。その上で、安全で信頼できるAIを通じて政府と建設的に協力していく姿勢を維持していると付け加えました。
なぜ重要か
Claudeを利用している企業や開発者にとって、この判断は大きな安心材料となります。大統領令が出された直後、政府関連の契約を持つ企業の間では、AnthropicのAPIを使い続けることがリスクになりかねないという混乱が広がっていましたが、今回の差し止めで差し迫った懸念はいったん解消されました。
業界全体にとっても、これは極めて重要な前例です。AI企業が自らの安全原則を守るために国家権力と法廷で対峙し、司法によって行政の越権が止められた初めての事例と言えます。もし政府の方針に従って兵器利用を認めない民間企業を国家権力で排除できるとすれば、各社が掲げるAI安全基準は形骸化してしまうところでした。
本来は外国の脅威に対抗するための制度を国内のAI企業への制裁に乱用した政権の手法は、司法から見ても無理があったと考えられます。ただし、今回の決定はあくまで仮処分です。本訴訟の行方や、政権側との関係修復をどう進めるかという課題は依然として残されています。
情報源 (2)
- wsj.com(新しいタブで開きます)原文wsj.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com