Anthropicが米国防総省を提訴、「AI軍事利用の制限巡る違法報復」と主張
Anthropicはカリフォルニア州連邦地裁で米国防総省を提訴した。国内監視や完全自律型兵器への利用を拒んだことでサプライチェーンリスクに指定され、全政府機関から6カ月以内に排除される報復を受けたと主張し、憲法違反を訴えている。国防総省はコメントを控えた。

最先端の AI モデルを開発する Anthropic が、自国の国防総省を相手取って法廷闘争に踏み切りました。
同社は 3 月 9 日、カリフォルニア州の連邦地裁およびコロンビア特別区連邦巡回控訴裁判所に提訴しました。軍事利用をめぐる方針の対立から、国防総省が同社を「サプライチェーンリスク」に指定し、トランプ政権が連邦機関からの全面排除を命じた措置の違法性を訴えています。
「完全自律兵器」と「国内監視」という二つのレッドライン
事の発端は、国防総省との軍事利用交渉における Anthropic の倫理的方針でした。同社は自社技術の提供にあたり、米国市民に対する大規模な国内監視への利用と、人間の判断を介さずに標的決定や攻撃を行う完全自律兵器への利用という、二つの譲れない一線を設定していました。
これに対しピート・ヘグセス国防長官は、軍は「あらゆる合法的目的」のために AI を活用できる権利を持つべきであり、民間企業のポリシーによって制限されるべきではないと反論しました。トランプ大統領やヘグセス長官は、同社やダリオ・アモデイ CEO を急進的でウォークだと批判しました。
その後、国防総省は Anthropic を国家安全保障上のサプライチェーンリスクに正式指定しました。トランプ大統領は全連邦機関に対し、6 か月以内に同社技術の利用を停止するよう命じました。一般調達局は OneGov 契約を解除し、米政府の三権すべてにおいて Claude へのアクセスが遮断される事態に発展しました。
サプライチェーンリスク指定の違法性を突く二面訴訟
このサプライチェーンリスク指定は、本来は海外の敵対勢力などサイバー脅威をもたらす企業を対象とする極めて異例の措置です。五角形と取引のある民間企業は、自社のシステムで Anthropic を利用していないことを証明しなければならなくなります。
Anthropic はサンフランシスコの訴状で、自社モデルの限界や安全性に関する見解表明は合衆国憲法修正第 1 条が保障する言論の自由であり、政権の対応は違憲の報復行為であると主張しました。適正手続きを定めた修正第 5 条の侵害や、大統領権限の逸脱も指摘しています。
さらにコロンビア特別区の控訴裁判所では、連邦調達法に基づく手続き違反を追及しています。調達法が義務付けているリスク評価の実施や企業への事前通知、弁明の機会の付与、連邦議会への通知を五角形が完全に無視したと訴えています。
マイクロソフトなどの主要パートナーは提携継続を表明していますが、国防総省関連の事業から Anthropic の技術を完全に切り離す隔離体制の構築を迫られています。
なぜ重要か
この訴訟は、最先端 AI の開発者が自らの技術の使われ方に拒否権を持てるのかという、極めて根源的な問いを突きつけています。
エンタープライズユーザーや開発者にとって、政府の独断的なブラックリスト化は巨大な事業リスクです。五角形と関わる企業が Anthropic の利用を禁じられれば、API やクラウド基盤のサプライチェーン全体に分断が生じます。特定モデルへの過度な依存がいかに脆弱であるかを改めて示す事態と言えます。
業界全体にとっても、この裁判の行方は重大です。もし政府が思想や安全基準を理由に民間 AI 企業を排除できる前例が確立されれば、競合各社も軍の要求に無制限に従わざるを得なくなります。自律型致死兵器への歯止めは一気に形骸化しかねません。
Anthropic の決断は、企業存続をかけた極めて合理的で果敢な対抗策であると考えられます。妥協して制限を外せば創業以来の安全ブランドが崩壊するため、法廷で行政権の乱用と手続き不備を正面から争う道しか残されていませんでした。
情報源 (2)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com