ユニバーサルミュージック、AI企業KLAYと提携 倫理的音楽モデル開発へ
ユニバーサルミュージックグループ(UMG)は AI スタートアップの KLAY との提携を発表した。著作権を尊重した大規模音楽モデル「KLayMM」を共同開発する。既存の配信楽曲と競合せず、正確な権利帰属を実現する仕組みを目指しており、数カ月以内の提供を予定している。

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)が、AI 音楽生成をめぐって硬軟織り交ぜた動きを強めています。
Suno や Udio といった AI 音楽スタートアップや Anthropic を著作権侵害で提訴する一方で、合法的とされる新たな生成 AI 企業とは積極的に手を組んでいます。
UMG は 10 月 28 日、ステルスモードで開発を進める米スタートアップ KLAY Vision と戦略的パートナーシップを締結したと発表しました。音楽業界やクリエイターと協調する倫理的な基盤モデルの共同開発を目指します。
ステルス企業が挑む大規模音楽モデル
KLAY が具体的にどのような製品を出そうとしているのか、詳細はまだ明かされていません。同社は現在「KLayMM」と呼ばれる大規模音楽モデル(Large Music Model)を開発中であり、数カ月以内にプロダクトをローンチする予定だとしています。
同社の説明によれば、開発中のプラットフォームはクリエイターへの正確なクレジット表記を重視しており、従来のストリーミングサービスで配信されている既存アーティストの楽曲カタログと競合するものではないとしています。
創業者兼 CEO の Ary Attie 氏は、「次のビートルズは KLAY とともに演奏するだろう」と強気なコメントを残しています。
役員陣の顔ぶれも目を引きます。チーフコンテンツオフィサーの Thomas Hesse 氏はかつてソニー BMG でグローバルデジタルビジネスを統括し、iTunes や VEVO の立ち上げに関わった人物です。エンジニアリング責任者には ByteDance の音声・音響知能部門 SAMI で技術リードを務めた Matt Avent 氏が就任。さらに Google DeepMind で音楽生成モデル Lyria の開発を率いた Björn Winckler 氏もリサーチ責任者として合流予定です。
訴訟と提携を使い分ける UMG の計算
UMG にとって、AI 企業との提携はこれが初めてではありません。
同社会長の Lucian Grainge 氏は先週、Business Insider による「AI 界で最も影響力のある人物」リストにエンタメ業界から唯一選出されました。無許諾の学習データを用いる企業を徹底的に提訴する一方、ライセンス契約を交わしたパートナーを増やしている点が高く評価された形です。
UMG はすでに YouTube との AI インキュベーターや、利用ごとの収益分配技術を開発する ProRata.ai、BandLab、Endel などと協業を進めています。10 月 25 日には、SoundLabs の音声変換プラグインを用い、ブレンダ・リーの往年のヒット曲のスペイン語版を AI で制作して公開したばかりです。
なぜ重要か
今回の動きは、レコード業界の巨人が AI 生成音楽のルール作りを自らの手で主導しようとしている姿勢を明確に示しています。
クリエイターにとって、Suno などの既存ツールは手軽な反面、著作権侵害の法的リスクがつきまとい、商業作品へ大々的に導入しにくいのが現状でした。KLayMM が権利処理と正確なクレジット表記を両立させて登場すれば、プロが安心して制作現場に組み込める現実的な選択肢になる可能性があります。
業界全体から見れば、UMG の立ち回りは非常に計算されています。無断学習を行う先行サービスを司法の場で牽制しつつ、DeepMind などのトップ研究者を擁する新興企業を自陣に引き入れ、合法的な代替基盤を囲い込む構図です。
もっとも、KLAY が主張する「既存の音楽サービスと競合しない新たな体験」がどのような市場を作るのかは未知数です。どれほど有名エンジニアが揃っていても、リスナーが望む形でなければ一過性のギミックに終わるリスクは残されており、数カ月後の製品発表が最初の試金石となります。
情報源 (2)
- musicbusinessworldwide.com(新しいタブで開きます)原文musicbusinessworldwide.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com
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