UAE、全国民と居住者にChatGPT Plusを無料開放へ OpenAIと提携
OpenAIはアブダビのG42と提携し、UAEの全市民および居住者を対象に月額20ドルのChatGPT Plusを無料で提供すると発表した。国家規模での無料提供は世界初。「Stargate UAE」の一環として、アブダビに巨大AI拠点を整備し、来年にも最初のデータセンターを稼働させる計画だ。

国が国民全員分の有料AIサブスクリプションを全額負担する世界が、ついに現実のものとなりました。
アラブ首長国連邦(UAE)は5月25日、OpenAIとの包括的提携の一環として、国内の全市民および居住者を対象に、通常月額20ドルの「ChatGPT Plus」を無料で提供すると発表しました。国家規模で有料の最先端AIサービスを全人口に無償開放するのは世界初のことです。
しかし、この動きの真の狙いは単なる無料配布にとどまりません。その裏には、天文学的な規模のインフラ整備計画が動いています。
5ギガワットの巨大拠点と米国内への同額投資
今回の取り組みは、アブダビのテクノロジー大手G42とOpenAIが進める「Stargate UAE」構想に基づいています。このスーパーコンピューティング構想には、NVIDIA、Oracle、ソフトバンク、Ciscoといった名だたる巨頭が参画しています。
まず2026年にアブダビで稼働を予定しているのは、初期容量200MWを備えた1GW規模のデータセンターです。
さらに米・UAE間の別合意に基づき、アブダビには5GW規模のAIキャンパスが建設される計画です。5GWは米国の1つの州全体の電力を賄える規模であり、米国外としては世界最大のAI施設となります。
加えてG42は、OpenAIが今後米国内に建設するデータセンターに対し、同額(1対1)のマッチング投資を行うことを約束しました。この二国間提携の総額は数百億ドル規模に達します。
当然ながら、この巨大プロジェクトは米ワシントンで議論を巻き起こしています。ロー・カンナ下院議員らは、オハイオ州やペンシルベニア州などの米国内ではなく海外に巨大拠点を置く判断を厳しく批判しました。一方で、元トランプ政権アドバイザーのデイヴィッド・サックス氏は、中国のAI野心に対抗するための戦略的布石だと評価しています。批判に対し、OpenAIのサム・アルトマンCEOは「ナイーブだ」と一蹴し、AIの可能性を広げるには地球規模のスケールが欠かせないと強調しました。
なぜ重要か
UAEのこの一手は、極めて野心的かつ合理的だと私たちは考えます。AIを教育や医療のような公共インフラと位置づける「ユニバーサル・ベーシックAI」の概念を、世界で初めて国家レベルで実証する形になったからです。
現地の学生やビジネスパーソンにとって、月額20ドルの壁が消える価値は小さくありません。全国民が日常的に最先端モデルを使いこなす環境を強制的に作り出すことで、他国が追いつけないスピードで国全体のAIリテラシーを引き上げる狙いが見て取れます。
OpenAIにとっても、米国内で深刻化する電力不足と計算資源コストの課題を、エネルギーと資金が潤沢なUAEとの提携で回避できるメリットは絶大です。G42による米国内投資をセットにした点も、自国への配慮として巧妙なディールメイクと言えます。
ただし、米国の超党派が注視する先端技術輸出規制の視点から見れば、地政学的な火種を抱え込んだことは否定できません。また、一国の重要インフラや知的生産を米国の民間1社に依存することの主権リスクについても、今後UAEは慎重な舵取りを迫られることになりそうです。
情報源 (1)
- thearabianstories.com(新しいタブで開きます)原文thearabianstories.com