ソニーの卓球ロボット「Ace」がプロ選手に勝利、回転をミリ秒で検知
ソニーは自律型卓球ロボット「Ace」の対戦映像を公開した。公式ルールのもとで複数のプロ選手に勝利しており、電動スライドレール上を高速移動しながらボールの回転や軸を瞬時に計測する。守備にとどまらず自ら回転やコースを変えて攻める適応力を備え、対戦した平野美宇選手もラリーでの精度の高さを評価した。

展示会で見かける卓球ロボットといえば、決まったコースに打ち返してくれる高精度なピッチングマシンのようなものが大半でした。スピンを少し強くかけたりコースを急に変えたりすると、すぐに追いつけなくなるのが常でした。
ソニーが公開した自律型卓球ロボット「Ace」は、その常識を完全に塗り替えました。Aceは日本卓球協会公認審判員のもと、公式競技ルールに則ってプロ卓球選手と対戦し、今年2月から4月にかけて世界ランキング経験者7名から勝利を収めました。
対戦相手には女子シングルス世界ランキング26位の木原美悠選手や、オリンピック銀メダリストの平野美宇選手が含まれています。試合後、平野選手は「本当に強い。これに勝てる人はいるのか」と驚きを口にしました。
1ミリ秒未満で回転を読み、止まって打つ
卓球は球をただ打ち返す競技ではありません。上回転、下回転、横回転、カットなど、ボールの挙動はすべて回転に支配されています。人間のプロに勝つためには、ボールの軌道だけでなく回転の強さと回転軸を瞬時に見抜く必要があります。
Aceは高度なビジョンシステムを搭載し、ボールを見るだけで1ミリ秒未満のうちに回転数と回転軸を計算します。自分からカットやスピンを打ち分け、相手のミスを誘うコースへ積極的に配球する適応戦略も備えています。
ハードウェア構成も合理的です。Aceには二足歩行の脚はなく、高剛性の電動スライドレール上を左右へ高速移動します。腕や手首の角度を瞬時に調整し、遅延なくインパクトを迎えることが可能です。
平野選手はAceの動きについて、一流選手特有の「動きながら打たない」技術を再現している点を指摘しました。球が来る位置へ素早く先回りして完全に静止してから打球するため、相手選手からは打球コースを予測するのが極めて困難だといいます。
平野美宇選手が語る実力:女子なら世界トップ10
ソニーは2025年4月にネイチャー誌でAceの研究成果を発表していましたが、当時のバージョンは上級アマチュアには勝ててもプロには敵いませんでした。その後改良を重ね、同年12月にプロからの初勝利を記録、今年春の連勝へとつなげました。
平野選手は対戦後、Aceのラリーにおける安定感は「ミスがまったく出ない」と評価し、女子選手の間であれば世界トップ10に入るポテンシャルがあると述べています。
一方で課題もあります。男子のトップ選手のようにサーブの切れ味がさらに鋭く、強烈な打球パワーを持つ相手に対しては、守備を打ち破られる可能性があるとし、男子なら50位前後の実力ではないかと分析しています。
なぜ重要か
対人対戦型の本格的なスポーツにおいて、公式ルールに準拠した状態で自律型ロボットが世界ランカーを打ち負かしたのは画期的な成果です。
ソニーの設計判断は非常に現実的で優れています。二足歩行という見栄えを捨て、頑丈な電動レールを採用したことで、ミリ秒単位の加減速と高い打球精度を確実に両立させました。タスクの達成に直結する合理的な割り切りが、プロ撃破という結果を引き寄せています。
卓球界にとっても、練習環境の常識が変わる契機になり得ます。人間の一流選手をスパーリング相手として拘束することなく、疲労知らずで相持球を絶対にミスしない理想的な練習相手を確保できる道が開かれました。
大型レール設備が必要なため導入コストは依然として高いものの、高速ビジョンとロボティクス制御が組み合わさったとき、スピードと反射神経を競う競技でも機械が人間と互角以上に渡り合えることが証明されました。
情報源 (1)
- ai.sony(新しいタブで開きます)原文ai.sony