Sakana AIがSakana Chatを公開:事後学習で検閲を是正、回答拒否率72%をほぼゼロに
Sakana AIは海外オープンモデルを日本仕様へ適応させた「Namazu」α版搭載のSakana Chatを公開した。DeepSeekやLlamaをベースに事後学習を施し、推論などの基礎性能を落とすことなく、海外モデル特有のバイアスや72%あった回答拒否率をほぼ0%に改善した。

最先端のオープンウェイト基盤モデルは驚異的な進化を遂げていますが、開発元のイデオロギーや情報統制の傾向が反映され、デリケートな歴史や政治の話題を振ると回答を拒否したり曖昧に濁したりするという課題がありました。
東京を拠点とする Sakana AI は 3 月 24 日、こうした課題を解決する事後学習(post-training)技術の実証として、試作モデルシリーズ「Namazu」(α版)と、それを搭載したウェブチャットサービス「Sakana Chat」を公開しました。巨額の事前学習コストをかけるのではなく、世界最高水準のオープンモデルを活用し、日本社会の文脈や価値観に適応させるアプローチです。
拒否率72%をほぼゼロへ劇的改善
今回公開された Namazu シリーズは、Namazu-DeepSeek-V3.1-Terminus、Llama-3.1-Namazu-405B、Namazu-gpt-oss-120B の 3 種類です。Llama についてはライセンス規約に準拠して名称順を変更しています。
最大の特徴は、海外製モデル特有の検閲やバイアスの是正です。Sakana AI の独自ベンチマークによると、ベースモデルの DeepSeek-V3.1-Terminus は日本や他国が関わる政治・歴史・外交テーマの質問に対して 72% の確率で回答を拒否していました。これに対し、事後学習を施した Namazu-DeepSeek では、この回答拒否率がほぼ 0% にまで改善され、客観的で多角的な事実提示が可能になりました。
事後学習によって基礎性能が損なわれていない点も重要です。AIME’25 や MMLU-Redux、GPQA Diamond、LiveCodeBench など主要な推論・知識・コーディングベンチマークにおいて、Namazu はベースモデルと同等水準のスコアを維持しました。日本語ベンチマーク(Nejumi Leaderboard4、Swallow 等)でもベースモデルや同規模モデルと遜色ない結果を出しています。
Sakana Chat には最新情報を取得するウェブ検索機能も統合されています。開発にあたっては 2025 年 10 月から 11 月にかけて GMO インターネットの「GMO GPU クラウド」による計算資源支援を受け、約 1000 名のベータテスターの意見を反映させました。詳細なテクニカルレポートや一部モデルのウェイト公開も準備中としています。
なぜ重要か
一般ユーザーや研究者にとって、Sakana Chat は待望のツールと言えます。DeepSeek や 405B クラスの圧倒的な推論能力を享受しながら、これまでの海外モデルで頻発していた一方的なバイアスや政治的回答拒否に悩まされずに済みます。ウェブ検索も備えているため、時事問題の調査や多角的な情報収集に今すぐ試す価値があります。
産業的な視点では、Sakana AI の手法は非英語圏における「AI 主権」の現実的な最適解を示しています。フロンティアモデルの事前学習には天文学的な計算資源が必要であり、米中の巨大テック企業に正面から挑むのは合理的ではありません。最高峰のオープンウェイトモデルを巧みに活用し、自国の文化や要件に合わせた高度な事後学習に注力する方が、圧倒的に低コストかつ迅速に質の高い国産環境を整備できます。
一方で、このモデルはオープン基盤のライセンス方針や供給に依存し続けるという構造的なリスクを抱えています。また、ベースモデルに組み込まれていた安全制限を技術的に解除して拒否率をゼロ近くまで下げた際、不当な検閲の排除と本来必要な安全性の維持をどう両立し続けるかは、モデルウェイト公開に向けて慎重な運用が求められるポイントです。
情報源 (1)
- sakana.ai(新しいタブで開きます)原文sakana.ai