クアルコム、次世代チップに生成AIを直接統合 来年の高級スマホに搭載へ
クアルコムは10月下旬のサミットで生成AI対応の次世代フラッグシップチップを披露すると明かした。オンデバイス処理により、クラウドを介さずプライバシーを守りながら機内モードでも動作する。来年登場するハイエンドAndroid端末から順次数十億パラメータ規模のAIが動く見込みだ。

ChatGPT や Midjourney といった生成 AI は世界を驚かせましたが、これまでの利用環境は主にパソコンのブラウザやクラウド経由のアプリに限られていました。
Qualcomm はその常識を覆そうとしています。米 CNET の 8 月 25 日の報道によると、同社は次世代のプレミアム向けチップに生成 AI を直接組み込む計画を進めています。10 月下旬にハワイで開催される年次イベントで詳細が披露され、早ければ来年登場するハイエンド Android スマートフォンに搭載される見通しです。
端末内で動く 70 億パラメータ、通信なしで動く強み
Qualcomm で製品管理担当シニアバイスプレジデントを務める Ziad Asghar 氏は、端末上で動くオンデバイス AI こそが究極の到達点だと語ります。スマートフォンには移動履歴や検索した飲食店、撮影した写真など個人のコンテキストが集約されています。これを直接参照することで、クラウド型の一般的な回答よりも遥かに実用的な提案が可能になります。
プライバシーと応答速度の面でもメリットは明確です。データが外部サーバーへ送信されないため機密性が保たれ、機内モードや電波の届かない場所でも即座に処理できます。
さらに、クラウドの運用コスト削減という現実的な側面もあります。4 月時点の試算では、OpenAI が旧来の GPT-3 を使って ChatGPT の問い合わせを処理するだけでも 1 日あたり約 70 万ドルの費用がかかっていたとされます。Techsponential のアナリスト Avi Greengart 氏が指摘するように、端末内での AI 実行はハードウェア購入時に計算リソースの代金を先払いしているため、追加の運用費がかかりません。
Qualcomm は 2 月の MWC で、Snapdragon 8 Gen 2 を搭載した端末を使い、画像生成モデル Stable Diffusion をローカル環境で動かすデモを実施しました。Asghar 氏によると、研究所内ではすでに 70 億パラメータ規模のモデルが動作しており、最上位チップでは 100 億パラメータを超えるモデルの処理も視野に入っています。これらは Hexagon プロセッサや NPU が担うため、長時間のデモでも端末が熱を持ったりバッテリーが枯渇したりすることはなかったとしています。
写真補正からリアルタイム対話アシスタントへ
端末上で複数の AI モデルを連携させる活用法も示されています。例えば、音声認識で聞き取った指示をテキスト化して画像生成モデルに渡し、Meta が提供するオープンな Llama 2 などを組み合わせて、リアルな表情と音声で応答するバーチャルアシスタントを端末内で完結させる構成です。
この取り組みはスマートフォンだけでなく、PC や車載システムにも広がる予定です。同社はテレビドラマ『ナイトライダー』に登場する相棒車ナイト 2000 のような高度な車載アシスタントや、通話内容から要点をまとめたプレゼン資料を自動作成するオフィス向け機能の実現を目指しています。
Recon Analytics のアナリスト Roger Entner 氏は、サードパーティ製アプリへの本格的な浸透には時間がかかるものの、まずは失敗した写真の自動修正やフィルター生成、キーボードの自動修正機能の向上といった身近な機能から定着していくだろうと予測しています。
なぜ重要か
生成 AI を端末内のチップで直接動かすアプローチは、クラウド一極集中の AI 利用スタイルに対する大きな転換点になります。一般ユーザーにとっては、通信環境に左右されず、プライベートな写真や位置情報をクラウドに預ける不安なしに高度な支援機能を使える実用的なメリットがあります。
業界全体にとっても、頭打ちになりつつあるスマートフォンのスペック競争に新たな買い替え需要を生み出す起爆剤になり得ます。高価なフラッグシップ機に「ローカルで賢い AI が動く」という明確な差別化要因が加わるためです。また、自社製フレームワークの開発を進めキーボード修正などに Transformer を取り入れ始めたとされる Apple に対しても、先行してハードウェア実装の主導権を握る構えを見せています。
ただし、今すぐ過度な期待を寄せるのは禁物だと考えられます。70 億から 100 億パラメータ規模のローカルモデルは、巨大なクラウドモデルと比較すれば推論能力に限界があります。サードパーティの開発者が単なるギミックを超えてどれだけ便利なアプリ体験を構築できるか、そして実際の日常利用でバッテリー消費をどこまで抑え込めるかが今後の普及を左右するはずです。
情報源 (1)
- cnet.com(新しいタブで開きます)原文cnet.com
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