OpenAIがAPI規約を改定:顧客データのモデル学習利用をデフォルト停止
OpenAIはChatGPTとWhisperのAPI提供開始にあわせ開発者向け規約を改定しました。API経由で送信されたデータはオプトインしない限りモデル学習に利用されなくなり、データの保持期間も原則30日に設定されます。プライバシー懸念を払拭し開発者の参入を促す狙いです。

社内システムや自社サービスに生成AIを組み込もうとしたとき、最も大きな壁となるのが法務やセキュリティ部門の懸念です。送信した機密情報や顧客データが、相手企業のモデル学習に勝手に使われてしまうリスクを恐れるためです。
ChatGPTとWhisperのAPI提供開始にあわせ、OpenAIは開発者向け利用規約の改定に踏み切りました。
APIデータの無断学習を停止、権利関係を明確化
新たなポリシーでは、API経由で送信されたデータについて、開発者や組織が明示的に同意しない限り、モデルの再学習を含むサービス改善目的での利用をデフォルトで停止します。
あわせて、APIユーザーのデータ保持期間を原則30日間と定め、ユーザーの要件に応じてより厳しい保持設定を選択できるようにしました。利用規約も簡素化され、モデルに入力されたデータおよび生成された出力の両方について、所有権がユーザーにあることが明確に示されています。
OpenAIの社長兼会長であるGreg Brockman氏はTechCrunchの取材に対し、データの所有権自体は以前からユーザーにあったとしつつも、生成AIを巡る法的な課題の浮上や顧客からの強い要望を受けて規約を書き直したと説明しています。Brockman氏は、開発者にとって徹底的に使いやすい存在になることが最優先事項であり、他者がその上で持続可能なビジネスを築けるプラットフォームを目指していると語りました。
これまで開発者コミュニティからは、データ処理方針がプライバシーリスクを抱えていることや、自社のデータがOpenAIの利益のために使われているという不満の声が上がっていました。実際、同社のサポート窓口でも、履歴から特定のプロンプトを個別削除できないため、ChatGPTに機密情報を入力しないよう注意を促していた経緯があります。
事前審査を廃止し、自動監視による事後検知へ移行
利用拡大を阻んでいたもうひとつの要因である、公開前の人間による事前審査プロセスも撤廃されました。
これまでは開発者がアプリを公開する際、アイデアを申請して順番待ちをする必要がありましたが、今後は自動化されたシステムによる運用へと切り替わります。
同社の広報担当者はメール取材に対し、過去の審査で圧倒的多数のアプリが承認されていた実績と、監視能力が昨年から大幅に向上したことを理由に挙げています。従来の事前承認制から、実際のトラフィックを監視して問題のあるアプリを特定・調査する事後検知の仕組みへとシフトした形です。
この自動化により審査スタッフの負荷が減るだけでなく、APIを活用したプロダクトを大量かつ迅速に世へ送り出すことが可能になります。マイクロソフトから数十億ドルの巨額出資を受けたOpenAIは、収益化への圧力を急速に強めています。同社の年間売上高予測は約2億ドルと報じられていますが、これまでに投じられた10億ドル超の資金規模と比べると、さらなる事業拡大が急務となっています。
なぜ重要か
ビジネスにAIを組み込みたい開発者や企業にとって、今回の規約改定は最大の障壁を取り除く決定打となります。学習への無断流用がなくなり、保持期間と権利の所在が明確になったことで、法務チェックを通過できずに実証実験で止まっていた多くのエンタープライズ向けプロジェクトが本格導入へと舵を切れるようになります。
業界全体にとっても、OpenAIが「APIデータをデフォルトで学習に使わない」という基準を打ち立てた意義は小さくありません。追従する競合モデル提供者も同様のプライバシー基準を約束せざるを得なくなり、市場全体が一般的なB2Bクラウドサービスの商習慣へと一気に適正化されていくはずです。
私たちは、今回の判断をエンタープライズ市場で生き残るための極めて現実的で賢明な転換だと評価しています。初期の急速な成長フェーズではデータ収集を優先できたとしても、基盤プラットフォームとして有料顧客を獲得するにはデータの安全性を保証する以外に道はありません。事前審査の廃止はエコシステムの拡大を加速させる一方で、事後検知頼みになるため、悪意あるアプリが拡散した際の後手対応というリスクも内包しています。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com