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研究

OpenAIとRetro Bio、GPT-4b microで山中因子を再設計し発現効率を50倍に向上

公開 拡散指数 37

OpenAIと米Retro Biosciencesは、タンパク質設計に特化したモデル「GPT-4b micro」を用いて山中因子の新たな変異体を設計したと発表した。体外実験において、幹細胞の初期化マーカーの発現量が野生型と比べ50倍以上に向上し、DNA損傷の修復能力も高まることが確認された。

OpenAIとRetro Bio、GPT-4b microで山中因子を再設計し発現効率を50倍に向上
画像:openai.com

細胞の時計の針を巻き戻す作業は、これまで暗闇の中で手探りを続けるような過酷な研究でした。

成熟した細胞を多能性幹細胞へ初期化できる山中因子は2012年のノーベル賞に輝きましたが、その変換効率は通常0.1パーセント未満と極めて低く、完了までに3週間以上かかります。高齢のドナーから採取した細胞では、この効率はさらに低下してしまいます。

OpenAIは長寿領域のバイオスタートアップであるRetro Biosciencesと共同で、この課題に挑みました。GPT-4oをベースにタンパク質工学特化型として開発された軽量モデル「GPT-4b micro」を活用し、再設計された因子によって幹細胞リプログラミングマーカーの発現量を野生型対照群の50倍以上に引き上げることに成功しました。

100箇所のアミノ酸を一気に改変する大胆さ

従来の指向性進化法では、天文学的な組み合わせの中から一度に数箇所のアミノ酸を変異させるのが限界で、成功率も10パーセント未満に留まるのが通例でした。

これに対し、GPT-4b microが設計したRetroSOX変異体は、平均して100残基以上のアミノ酸が野生型と異なっているにもかかわらず、実験スクリーニングにおいて30パーセント以上が天然の因子を上回る性能を示しました。

さらにKLF4の改変では、モデルが生成した候補の約50パーセントが既存の最良カクテルを超える成果を叩き出しました。50歳以上のドナー由来の細胞に対しmRNAを用いて両因子を導入したところ、わずか7日で多能性マーカーの発現が確認され、DNA損傷の修復能力も従来の山中因子を上回る結果が得られました。

6万4000トークンの文脈長が拓いた新境地

多くのタンパク質言語モデルが単一の配列や静的な三次元構造を重視するのに対し、山中因子は特定の安定構造を持たず、柔軟に他の因子と相互作用する性質を持っています。

OpenAIは構造情報だけに頼るのではなく、テキストによる機能解説や共進化配列、相互作用データを豊富に学習させました。これにより、タンパク質モデルとしては異例となる最大6万4000トークンのコンテキストウィンドウを実現し、テキストの大規模言語モデルと同じようなスケーリング則をタンパク質設計でも発現させました。

なぜ重要か

今回の成果は、生成AIがバイオテクノロジーのボトルネックをいかに打破できるかを示した象徴的な事例だと考えます。

再生医療や細胞若返りを目指す開発現場において、iPS細胞の樹立効率の低さと作製期間の長さは実用化を阻む大きな壁でした。高齢ドナーの細胞でも短期間で高品質な多能性を獲得できるなら、糖尿病や視力障害の治療、臓器再生などの研究開発スピードは飛躍的に高まります。

OpenAIのアプローチも見事です。生物専用の全く新しいアーキテクチャを一から作るのではなく、汎用LLMの知見を引き継いだ小型モデルに長大な文脈を読み込ませることで、これまでにない深い変異を高い命中率で成立させました。

ただし、現段階での成果はあくまで体外の培養環境における検証です。リプログラミングの効率が劇的に向上することは、生体内に適用した際のゲノム安定性や腫瘍化リスク管理といった安全面でのハードルがより高くなることを意味します。この強力すぎる分子が治療薬としてどこまで制御可能なのか、今後の慎重な検証が求められます。

情報源 (1)

  1. [1]
    openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com

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