ChatGPTのアカウント情報10万件超が流出、OpenAIはシステム侵害を否定
セキュリティ企業Group-IBの報告により、10万件超のChatGPT認証情報がダークウェブで取引されていることが分かった。OpenAIは自社システムのハッキングではなく、端末側の情報窃取マルウェアが原因だと説明。保存された対話履歴から機密情報が漏洩するリスクが懸念されている。

多くのユーザーが社内のソースコードや企画書、個人的な日記まで日常的に ChatGPT に入力しています。OpenAI 本体の強固なセキュリティを信頼しているからですが、攻撃者は OpenAI のサーバーを破る必要などありませんでした。ユーザーの PC から直接奪い取れば済む話だったからです。
シンガポールのサイバーセキュリティ企業 Group-IB の調査によると、2022 年 6 月から 2023 年 5 月にかけて、10 万件以上の ChatGPT アカウント情報がダークウェブ上に流出していたことが判明しました。流出件数はツールの普及に伴って急増し、2023 年 5 月単月だけで過去最多となる 26802 件に達しています。地域別ではアジア太平洋地域での取引が最も目立ちました。
標的は OpenAI ではなく個人の PC
報道を受けて OpenAI は、自社のインフラがハッキングされたわけではないと説明しました。同社広報は、今回の流出はユーザーの端末に感染した情報窃取マルウェアによるものであり、OpenAI 自身の侵害ではないと回答しています。あわせて強固なパスワードの使用と信頼できるソフトウェアのみを導入するよう呼びかけました。
実態は、ブラウザに保存された認証情報や Cookie を根こそぎ盗み出すインフォスティーラー(情報窃取マルウェア)による被害です。最も多く使われたのは Raccoon と呼ばれるマルウェアで、単体で 78348 件のアカウントを奪いました。次いで Vidar が 12984 件、RedLine が 6773 件を記録しています。
この Raccoon はダークウェブ上でサブスクリプション型サービスとして提供されており、高度なプログラミング技術を持たない初心者でも安価にサイバー攻撃を実行できる仕組みが整っています。影響を受けた国はインド、パキスタン、ブラジル、インドネシア、米国、フランスなど広範囲に及びます。
チャット履歴そのものが機密情報の宝庫
一般的な Web サービスのパスワード漏洩と異なり、ChatGPT のアカウント流出には固有の危険があります。標準設定のまま使っていると、過去の対話履歴がすべて画面上に残されている点です。
多くのビジネスパーソンが、社外秘のソースコードの修正や未公開プロジェクトの草案作成、長文メールの要約にチャットボットを利用しています。攻撃者がアカウントを乗っ取れば、それらの機密ログをそのまま閲覧できてしまいます。さらに、PC がマルウェアに感染している場合、ChatGPT 以外のブラウザ保存情報や暗号資産ウォレットなども同時に抜かれている可能性が極めて高いのが実情です。
なぜ重要か
今回の件は、生成 AI の利用において最大のセキュリティホールが「ユーザー自身の端末環境」にあることを浮き彫りにしました。利用者は今すぐ二要素認証を設定し、業務上の機密や個人情報が含まれる不要なチャット履歴を削除するべきです。
企業視点では、サムスン電子などが生成 AI ツールの社内利用を制限した理由が改めて裏付けられたと言えます。従業員が作業効率化のために AI を使おうとするほど、マルウェア感染端末を経由した情報流出のリスクが跳ね上がります。社内ネットワークだけでなく、現場の端末セキュリティ全体を見直す契機になります。
OpenAI 側の「自社は破られていない」という主張は事実ですが、それだけで安心できる時代は終わったと私たちは考えます。AI が人間の機密情報を最も集約して記憶するプラットフォームになった以上、セッション管理の厳格化や定期的な履歴保護機能など、プロバイダー側にもエンドポイント被害を前提とした防衛設計が求められています。
情報源 (1)
- tomshardware.com(新しいタブで開きます)原文tomshardware.com