OpenAI、米国防総省との契約を修正へ 国内の大規模監視利用を明示的に禁止
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、米国防総省との契約を修正し、AIシステムを米国人の国内大規模監視に利用することを明示的に禁止する条項を追加すると発表した。アルトマン氏は2月27日の契約発表が拙速で日和見的に見えたと認め、違憲な命令に従うくらいなら刑務所に行くと述べた。

ペンタゴンとの契約発表からわずか数日で、OpenAIは前代未聞のブランド危機に直面することになりました。
社内からの強い反発やサンフランシスコ本社前での抗議活動、さらにはユーザーの解約ラッシュを受け、CEOのSam Altmanは米国国防総省との契約内容を修正すると発表しました。米国民を対象とした国内での大規模監視に同社のAIを利用することを明示的に禁止する文言を追加します。
Altmanは従業員向けの社内メモをX上で公開し、2月27日の金曜日に契約を急ぎすぎたことを認め、その動きが日和見主義的で雑に見えてしまったと振り返りました。
修正された条項とAltmanの釈明
修正後の条項には、合衆国憲法修正第4条、1947年国家安全保障法、1978年外国情報監視法(FISA)に基づき、米国民への国内監視を目的としたAIの意図的な利用を禁止することが明記されます。これにはデータブローカーから商業的に取得した個人情報の利用も含まれます。
Altmanはメモの中で、NSAなどの情報機関が契約変更なしにOpenAIのサービスを利用することはないと主張しました。さらに、もし違憲と信じる命令を受けた場合は、従うくらいなら刑務所に入る道を選ぶとまで述べています。
OpenAIの研究者であるNoam Brownも、抜け穴への対策を進める間、当面はNSAや国防情報機関への導入は見送ると補足しました。
この騒動の発端は、競合のAnthropicが自律型兵器や大規模監視への利用禁止というレッドラインを譲らず、政府からサプライチェーンリスク指定を受け利用禁止を命じられた直後、OpenAIがわずか24時間足らずで国防総省との合意を発表したことにありました。
ユーザー離れと競合への追い風
発表直後から、OpenAIの契約は形骸化しているのではないかという批判が相次ぎました。The Vergeの報道によると、国防総省が譲歩したわけではなく、過去に大規模監視を正当化してきた「合法的な利用」という枠組みにOpenAIが同意したにすぎないと関係者は指摘しています。
OpenAIの元政策研究責任者であるMiles Brundageも、OpenAIは実際には屈服したにもかかわらず、そうではないように見せかけたのだと疑問を呈しました。
市場の反応は極めて厳しいものでした。調査会社Sensor Towerによると、ChatGPTのアプリ削除数は前日比で295パーセント跳ね上がりました。
一方でAnthropicのClaudeは米国のApp Store無料ランキングで首位に躍り出ました。Anthropicはこの機を逃さず、他社チャットボットから履歴を引き継げるメモリ移行ツールを即座にリリースしています。
なぜ重要か
日常的にAIを使うユーザーにとって、今回の事態はサービス選びの基準が単なる性能から企業の姿勢へと移りつつあることを示しています。自分のプライベートな思考や業務データを預ける相手として、政府との距離感をどう保つ企業が信頼できるのか、多くの人が見直し始めています。
業界全体にとっても、最先端AIモデルの軍事利用において、一般消費者向けブランドと防衛調達の利益を両立させることがいかに難しいかが浮き彫りになりました。政府の意向に逆らえない一方で、一般ユーザーの信頼を一度失えば競合への流出は一瞬で起きます。
私たちは、OpenAIの今回の動きは明らかな戦術ミスだったと見ています。Anthropicが制裁の痛みを引き受けながらも倫理的な一線を守って世論の支持を集めたのに対し、OpenAIは空いた枠に飛びついた結果、猛反発を受けて後から契約を書き直す羽目になりました。失ったブランドイメージを取り戻すには、契約書の文言修正以上の時間がかかるはずです。
情報源 (3)
- engadget.com(新しいタブで開きます)原文engadget.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com
- bloomberg.com(新しいタブで開きます)報道bloomberg.com