米政府が輸出承認へ、NVIDIAが中国向けAI半導体「H20」の販売再開を申請
NVIDIAは中国向けAIチップ「H20」の販売再開に向け米政府にライセンスを申請し、近く承認される見通しとなった。米商務長官によればレアアースを巡る貿易交渉の一環。4月の輸出規制解除を受け中国企業が調達に動く一方、米議会からは安保上の懸念から批判も出ている。

数カ月前に中国向け先端AI半導体の締め付けを強めたばかりの米政府が、早くも方針を転換しました。
Nvidiaは、中国市場向けに性能を抑えたAIチップ「H20」の対中輸出再開に向け、米政府にライセンス申請を行っていることを明らかにしました。同社によれば、米当局からは近く承認が下りるとの保証を得ているとのことです。これを受け、火曜日の米株式市場でNvidiaの株価は約4%上昇しました。また、同様に中国向けチップ「MI308」を展開するAMDも商務省による申請審査を控えており、株価が5.6%上昇しています。
レアアースと引き換えのディール
この急転換の背景には、米中間の資源を巡る駆け引きがありました。
米商務長官のHoward Lutnick氏はロイターに対し、H20の輸出再開はレアアース交渉の一環だと明言しました。「磁石に関する通商合意の中に盛り込んだ」と述べ、3月に中国が停止したレアアースの対米供給再開と引き換えにした取引であることを示唆しています。この決定は、NvidiaのJensen Huang CEOがDonald Trump前大統領と直接会談した数日後に下されました。
米商務省は今年4月、性能制限版チップの対中輸出にも個別許可を義務付け、事実上の禁輸措置をとっていました。Nvidiaはこれにより最大150億ドルの減収リスクを試算していましたが、今回の再開により年間150億〜200億ドルの増収要因になるとみられています。同社はさらに、規制基準を下回る産業向け新GPU「RTX PRO」の投入も予告しています。
中国勢の争奪戦と米議会の反発
規制緩和の動きを受け、中国市場では即座にH20の確保に向けた動きが活発化しています。
報道によると、Nvidiaが購入登録用の承認リストを作成し、テンセントやバイトダンスなどの大手ネット企業が申請を進めていると伝えられました(バイトダンスは申請の事実を否定)。H20はグローバル向けのH100などに比べて大幅に処理性能が削られているものの、AI開発の世界標準となっているNvidiaのソフトウェア環境(CUDA)をそのまま使える点が最大の強みです。
一方、米議会からは強い批判が噴出しています。下院中国特別委員会の幹部らは、この決定が安全保障方針と矛盾していると非難。共和党のJohn Moolenaar議員は、米OpenAIよりはるかに低コストでモデルを開発した中国DeepSeekの台頭にH20が大きく貢献したと指摘しました。シンクタンク専門家からも、大量のH20が中国に渡れば米国のAI優位性が揺らぎかねないとの懸念が出ています。
なぜ重要か
今回の決定は、国家安全保障を掲げた半導体規制であっても、サプライチェーンの急所であるレアアースの前では取引材料にされ得るという現実を浮き彫りにしました。
中国のAIスタートアップやエンジニアにとって、H20の再供給は目先の開発パイプラインをつなぐ頼みの綱となります。国産チップへの強制移行に伴う莫大なソフトウェア書き換えコストを回避できるためです。しかし、政治判断一つで再び遮断されるリスクは依然として高く、長期的なインフラ投資の軸には据えづらいのが本音でしょう。
Nvidiaと業界全体にとっては、Jensen Huang CEOの政治的立ち回りが功を奏した形です。CEOは以前から「中国から締め出せばファーウェイを利するだけだ」と主張してきました。H20の販売を続けることで、中国の膨大なエンジニアをNvidiaのエコシステムに縛り付け、独自開発への完全移行を先送りさせる狙いがあります。短期的にはNvidiaの独壇場が守られた格好ですが、米国の規制基準が外交カードとして使われる前例ができたことで、今後の予見可能性はむしろ低下したと言えます。
情報源 (4)
- bloomberg.com(新しいタブで開きます)原文bloomberg.com
- siliconangle.com(新しいタブで開きます)報道siliconangle.com
- tech.yahoo.com(新しいタブで開きます)報道tech.yahoo.com
- the-decoder.com(新しいタブで開きます)報道the-decoder.com