米検察、NVIDIA製AIチップ密輸で4人起訴 ペーパー会社で対中輸出規制回避か
米連邦検察は NVIDIA の H100 や H200 などの先端 AI チップを中国へ密輸した疑いで 4 人を起訴した。不動産会社を装ったペーパー会社や偽造書類、中国からの送金を使い米国の輸出規制を逃れていたとされる。すでに 1 人が逮捕されている。

不動産仲介を名乗るペーパーカンパニーが実際に扱っていたのは、住宅ではなく米国の最先端AIチップでした。
米連邦検察は、Nvidia製GPUおよび同社製GPUを搭載したHP製スーパーコンピューターを米国から中国へ不正に密輸したとして、男女4人を起訴しました。司法関連記録を追跡するCourt Watchが公開した起訴状で明らかになりました。
起訴されたのはMathew Ho、Bryan Curtis Raymond、Tony Li、Harry Chenの4名です。密輸、共謀、マネーロンダリングの罪に問われており、現在までに1名が逮捕されています。
実態のない不動産会社を使った手口
起訴状によると、計画は2023年後半から始まりました。被告らは米政府の輸出許可を得ることなく、入手困難な最新のNvidia H200チップ50基や、前世代のH100チップの複数ロットを中国へ不正輸出したとされています。
隠れ蓑として使われたのが「Janford Realtor」という企業です。不動産業の看板を掲げていたものの実際の不動産取引は一件もなく、高度なAI向けプロセッサを不正に中継するためのペーパーカンパニーでした。
米国籍のHo被告が同社の登録代理人を務め、中国籍のLi被告がマネージャーを担当していました。中国の銀行口座から送金された資金を使い、虚偽の運送書類や契約書を偽造して米国の輸出規制を逃れていました。
チップの調達先の一つとされたのが、アラバマ州ハンツビルにあるRaymond被告の企業です。同被告はAIインフラ企業BitworksのCEOを名乗り、NvidiaやAMD製品の販売とサポートを手掛けていました。同氏は最近、別のクラウド企業CorvexのCTOに就任したと投稿していましたが、Corvex側は内定を取り消したと発表し、一切の関与を否定しています。
Nvidiaの広報担当John Rizzo氏は、密輸品でデータセンターを構築することは技術的にも経済的にも不可能だとコメントしました。同社は規制対象製品への修理やサポートを一切提供しておらず、監視体制は二次流通市場にも及んでいると説明しています。
なぜ重要か
今回の事件は、米国の厳重な輸出規制をかいくぐる地下ルートの実態を白日の下に晒しました。中国のDeepSeekが高性能モデルR1を発表した際、Scale AIのAlexander Wang CEOは「中国には外部が考える以上に大量のH100が存在している」と指摘していましたが、こうした密輸網がその供給源の一部だった可能性を示しています。
もっとも、50基程度のH200チップでは、小規模な実験やファインチューニングには使えても、最先端フロンティアモデルをゼロから学習させるには不十分です。さらに、メーカー公式の保守や故障部品の交換を受けられない環境でクラスターを安定運用するのは、極めてリスクが高いと言えます。
今回の摘発を受けて、米当局は中古チップ市場や小規模なシステムビルダーに対する監視を一段と強化するはずです。正規のAIスタートアップにとっても、ハードウェア調達時の本人確認や輸出コンプライアンスの確認手順が厳格化し、調達コストやリードタイムの増大につながると見られます。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com