ニューヨーク州がAI安全規制法「RAISE法」に署名、事故報告を義務化
ニューヨーク州のホークル知事が「RAISE法」に署名し、カリフォルニア州に続くAI安全規制を成立させました。大規模AI開発企業に対し、安全プロトコルの公開とインシデント発生後72時間以内の報告を義務付け、違反には最大300万ドルの罰金を科します。OpenAIやAnthropicは支持を表明しています。
連邦政府の規制が遅れるなか、米国の州知事たちが先手を打っています。カリフォルニア州に続き、ニューヨーク州もフロンティアAIの安全性に関する法案を成立させました。
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、AI安全規制法案であるRAISE法(責任あるAI安全性および教育法)に署名しました。これにより同州は、大規模なAI安全立法を導入した全米で2番目の州となりました。
この法律は、大規模モデルを開発する企業に対し、安全管理手順の公開と、重大なインシデント発生後72時間以内の州当局への報告を義務付けます。また、州金融サービス局内にAI開発を監視する専門部署を新設します。報告を怠ったり虚偽の申告を行ったりした場合、初回は最大100万ドル、再度の違反には最大300万ドルの罰金が科されます。
骨抜き批判を浴びた水面下の妥協
法案の成立に至る道筋は平坦ではありませんでした。州議会は6月に法案を可決していましたが、巨大IT企業による激しいロビー活動を受けてホークル知事が修正を求めていました。
メタ、IBM、インテルに加え、コーネル大学やニューヨーク大学などの学術機関が参加する業界団体「AIアライアンス」は数万ドル規模の反対広告キャンペーンを展開し、40万人規模の技術職雇用を脅かすと主張しました。
米メディアのThe Vergeによると、最終的に署名された法案は大幅に後退しています。原案にあった「100人以上の死傷者」や「化学・生物・核兵器による10億ドル以上の損害」といった壊滅的リスクをもたらすモデルのリリース禁止条項が削除され、報告期限や罰則も緩和されました。一方でニューヨーク・タイムズ紙は、知事が原案に署名し、議員側が来年修正に応じる密約を結んだと報じています。
分裂する業界と連邦政府の圧力
業界内の足並みも乱れています。OpenAIやAnthropicは公式には法案への支持を表明し、連邦レベルでの統一法整備を求めました。
しかし水面下では、ベンチャーキャピタルのa16zやOpenAI社長のグレッグ・ブロックマン氏が支援する特別政治活動委員会(スーパーPAC)が、法案を主導したアレックス・ボレス州下院議員の落選運動を画策しています。
さらにドナルド・トランプ大統領は、各州によるAI独自規制を阻止するよう連邦機関に命じる大統領令に署名しました。AI担当のデビッド・サックス氏が主導するこの連邦政府の動きにより、今後は法廷闘争へと発展する公算が高まっています。
なぜ重要か
一般の開発者やスタートアップにとって、今回の法律は超大規模モデルの開発元に限定されているため、直接的な開発の足枷になる可能性は低いと言えます。しかし、72時間以内のインシデント報告義務が課されることで、これまで企業内に隠されがちだった重大な安全上の不具合が可視化される利点があります。
私たちは、この妥協の産物は先端技術を地方自治体が規制する難しさを露呈していると考えます。法案を通すために壊滅的被害への責任条項を削らざるを得なかった点は、実効性の面で疑問が残ります。それでも、透明性の確保と行政の監視体制を確立したこと自体は前進です。
より本質的な問題は規制の分断です。加州とニューヨーク州が独自の基準を打ち立てる一方で、連邦政府が無効化を狙う構図が固まりました。AI企業は技術的な競争だけでなく、複雑怪奇な法規制のねじれに対処することを迫られそうです。
情報源 (2)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com