本文へスキップ
IFAI

業界動向

米NY州、全米初のデータセンター建設一時凍結令 50MW超が対象

公開 拡散指数 53

ニューヨーク州のホークル知事は50メガワットを超える大規模データセンターへの新規環境許認可を最長1年間停止する行政命令に署名した。AI普及に伴う電力需要の急増から住民生活や環境を守るため、規制当局が新たな評価基準を策定する時間を確保する狙いだ。

米NY州、全米初のデータセンター建設一時凍結令 50MW超が対象
画像:theverge.com

巨大テック企業を誘致するために巨額の減税や優遇措置を競い合ってきたアメリカの各州ですが、ついにその流れにブレーキがかかりました。

ニューヨーク州のキャシー・ホーチュル知事は7月14日、50メガワット以上の新規データセンターに対する環境許認可の発行を最長1年間停止する大統領令に署名しました。データセンターの建設を州全体で一時停止する措置は全米で初めてです。

50メガワット以上の大型計画を一斉凍結

テッククランチの報道によると、今回の措置により州内で計画されていた十数件のプロジェクトが影響を受ける見通しです。州環境保全局は、手続きが完了していない新規の許認可発行を直ちに停止します。

ホーチュル知事はこの1年間の猶予を使い、州公共サービス局に電力コスト、冷却用の水資源消費、大気汚染などに関する包括的な審査基準を策定させる方針です。さらに知事は、データセンター事業者に送電網支援基金への拠出を義務付ける仕組みの検討や、来年の議会再開時に大型データセンター向けの売上税免除措置を撤回する方針も明らかにしました。

一方で、州議会はさらに踏み込んだ規制を求めています。州議会が可決済みの法案は対象を20メガワット以上とし、再生可能エネルギーの導入や労働基準の順守を義務付けており、現在知事の署名待ちとなっています。委員会レベルでは3年間の停止を求める案も浮上しています。

地域住民の反発と連邦政府との温度差

データセンターの急速な拡大に対する米国内の視線は急速に冷え込んでいます。ピュー・リサーチの最近の調査では、AIに対して期待より懸念が勝ると答えた市民が大多数を占め、別の世論調査でも3分の2が電気代の高騰を心配していると回答しました。自宅の裏にデータセンターができるくらいならアマゾンの配送拠点のほうがましだという声すらあります。

過去にはメイン州議会でも同様の停止法案が可決されましたが、4月に知事の拒絶権行使で廃案となりました。また、230以上の団体が全米規模での一時停止を求めて署名活動を行っています。

しかし、ニューヨーク州の動きは連邦政府の方針と真っ向から対立する可能性があります。トランプ政権下の連邦エネルギー規制委員会は先月、データセンターの送電網接続を加速するための優先レーンを新設するよう送電事業者に指示したばかりです。

なぜ重要か

AI業界にとって、最大のボトルネックが半導体の確保から送電網や水資源といった現実世界の物理インフラへと完全に移行したことを示しています。

私たちは、ニューヨーク州のこの決断が他州にも連鎖する可能性が極めて高いと見ています。税制優遇と電力を湯水のように提供してテック企業を歓迎する時代は終わりました。地域住民に電気代高騰や環境負荷を押し付けるのではなく、送電網整備費用を事業者に負担させようとする知事のアプローチは極めて現実的で賢明です。

ただし、懸念もあります。許認可が年単位で止まれば、企業はより環境規制が緩く優遇措置の残る他州へ計画を移すだけで、根本的な電力不足の解決にはなりません。開発者やクラウドを利用するユーザーにとっても、インフラ建設の遅れは計算資源の高止まりに直結します。AIの物理的なコストを誰が背負うのかという議論は、まだ始まったばかりです。

情報源 (2)

  1. [1]
    theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
  2. [2]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com

毎日のAIピックアップ