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Neuralinkが臨床試験の進捗を公開:思考だけで車椅子を運転可能に

公開 拡散指数 43

Neuralinkは臨床試験の最新状況を公開し、麻痺のある被験者が思考だけで電動車椅子の前進、旋回、後退を操作する様子を披露した。脳の運動皮質に埋め込んだ1000個以上の電極信号を解読して車椅子を動かす仕組み。思考による操作が画面上のカーソルから物理ハードウェアへと広がったが、実用化にはまだ治験が必要となる。

画像:interestingengineering.com

これまでのNeuralinkの公開映像といえば、被験者がモニターの前に座り、思考だけでマウスポインタを動かしてチェスを指したり文字を打ったりする光景が中心でした。しかし、重度の麻痺を抱える人々にとって、真に求めているのは画面の中だけの自由ではありません。

Neuralinkは臨床試験「PRIME」の最新動画を公開しました。被験者となった麻痺患者が、考えるだけで電動車椅子を走らせ、旋回させ、後退させ、さらにはシートのリクライニングまで調整する様子を披露しています。

思考上のカーソルを、そのままアクセルに変える工夫

今回のシステムは、車椅子そのものをゼロから作り直すのではなく、既存のハードウェアとうまく繋ぐ巧妙な設計をとっています。

被験者の脳の運動皮質には、25セント硬貨ほどのサイズ(直径約23ミリ)の「N1」インプラントが埋め込まれています。髪の毛よりも細い極細の糸に計1024個の電極が配置され、専用の手術ロボットによって正確に配置されたものです。

身体が動かなくても、動かそうと意図した瞬間に運動皮質の神経細胞は電気信号を発します。機械学習モデルがこの信号をリアルタイムで読み解き、画面上の仮想カーソルの動きに変換します。

車椅子にはカメラが取り付けられており、前方の映像が専用アプリに映し出されます。画面上でカーソルを上に動かせば前進、下なら後退、左右で旋回となり、カーソルを遠くへ倒すほど速度が上がります。集中を緩めればカーソルは自動で中央に戻り、車椅子はゆっくり停止するため、不意の暴走を防ぐ安全対策も施されています。

数分で「第二の天性」に、無理な姿勢からの解放

操作感の習得は驚くほど早かったといいます。

被験者のアレックス氏は、脳波による運転は数分で「第二の天性」のように馴染んだと語っています。首を曲げた不自然な姿勢を強いられる従来のジョイスティックと比べ、身体的負担が大幅に軽減された点も大きな変化です。

Neuralinkによると、6月22日時点で世界中で26人がN1インプラントの手術を受けており、英国など海外での治験も進んでいます。ただし今回の公開内容は研究段階のものであり、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた市販製品ではないと強調されています。

なぜ重要か

今回の実演は、同社の技術が画面内の制御から現実世界のモビリティ支援へと踏み出した重要な一歩だと考えられます。

麻痺患者にとって、誰の手も借りずに自力で移動し、姿勢を変えられることは、生活の自立と尊厳の回復に直結します。実用化されれば、身体機能を失った多くの患者にとって替えの利かない支援技術になるはずです。

一方で、開頭手術のリスクを巡る議論は依然として残ります。競合のSynchronなどは、開頭を伴わず血管経由で電極を配置するアプローチを進めています。1024個の電極がもたらす精緻なコントロールが、開頭手術のリスクに見合うものなのか。安全性の長期データを含め、医療現場からの見極めはこれからが本番です。

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