Netflix、テレビ向け新機能「AI Discover」を試験導入 気分に合わせた作品推薦へ
Netflixはテレビ向けアプリに実験的新タブ「AI Discover」の提供を開始した。「気楽に観られるもの」などのテーマを選ぶと、新開発のインテリジェンス層がリアルタイムで好みを学習し提案する。不要な作品の除外も可能で、まずは米国の英語ユーザー向けに順次配信されている。

仕事終わりにテレビの電源を入れたものの、ホーム画面の作品リストを延々とスクロールするだけで30分が過ぎ、結局何も観ずに寝てしまった経験は誰にでもあるはずです。
Netflixは11月3日、この「作品選びの疲弊」を解消するための実験的な新機能「AI Discover」タブをテレビ向けアプリに順次導入し始めました。
気分に合わせて選び、嫌いな作品はその場で除外
テスト対象のアカウントでは、画面上部のナビゲーションバーに赤い宝石のアイコンと「New」の表示が付いた「Discover」タブが現れます。
中に入ると、従来のポスター一覧ではなく、気分やシチュエーションに応じたテーマ別の推薦が表示されます。たとえば「気楽に観られるもの(Something Light)」、「家族と観る映画(Family Movie Night)」、「短時間で観終われるもの(Quick Watches)」、「怖がらせて(Scare Me)」といった切り口です。
さらに踏み込んだテーマで絞り込むこともでき、しっくりこなければ「違うものを探す(Something Different)」を選んで選び直すことも可能です。
注目すべきは推薦の微調整機能です。各タイトルの「再生」や「マイリスト」の横に「おすすめを調整(Tune Your Recommendations)」ボタンが用意されました。気に入った作品を保存できるだけでなく、二度と見たくない作品を提案から排除でき、アプリはその設定を記憶します。
Netflixによると、この機能の裏では独自開発の「インテリジェンス層」が動いており、ユーザーのリアルタイムな反応を取り込みながら好みを学習し続けるとしています。
成長鈍化と人員削減のなかでの「実験場」
Netflixはこの新タブを「テストキッチン」と表現しています。新しい推薦のレシピをここで試作し、ユーザーの反応を見極めたうえで主要なUIへの正式採用を判断する計画です。
現在は米国の対応テレビを使い、英語で利用しているユーザーに向けて順次配信されており、数週間以内に提供範囲を広げる予定です。
この取り組みの背景には厳しい現実もあります。同社は最近、成長の鈍化と視聴時間の減少傾向が報じられるなかで約1,000人の人員削減を実施しました。ライブラリが膨らむ一方で、観たいものが見つからず離脱するユーザーをいかに引き留めるかが切実な課題になっています。
なぜ重要か
リモコン操作が前提のテレビ画面では、文字入力による検索や無限スクロールは大きなストレスでした。「今の気分」や「空き時間」という文脈から作品を探せる体験は、利用者の視聴開始までのハードルを確実に下げます。また、アルゴリズムの的外れな提案をその場で拒否できる機能は、長年放置されてきた不満への実用的な回答といえます。
動画配信業界の観点では、静的な過去の視聴履歴に基づくレコメンドから、リアルタイムな文脈理解への転換点となる可能性があります。Netflixが視聴離脱を減らせると証明すれば、Disney+などの競合各社もテレビ向けUIの刷新を迫られるはずです。
テレビ画面上で無理に対話型AIを導入せず、選択式のテーマと調整ボタンという直感的なUIに落とし込んだアプローチは手堅いと評価できます。ただし、感情や状況のラベリングが陳腐化すれば、単なる新しいカテゴリー分けと変わらなくなります。ユーザーの「観たくない」という意思をどれだけ正確に学習し続けられるかが成否の分かれ目になりそうです。
情報源 (2)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com