全米音楽家連合、ユニバーサルとワーナー提訴 Suno・UdioへのAI許諾で報酬未払いと主張
全米音楽家連合(AFM)はUniversal Music GroupとWarner Music Groupを相手取り提訴した。両社がAI音楽生成のSunoやUdioと和解・許諾契約を結びながら、演奏した所属音楽家に報酬やクレジットを分配していないと主張している。労使協定の「新規利用」条項に違反するとして、損害賠偿と学習データの開示を求めている。

レコード大手はAIによる著作権侵害を激しく非難していましたが、いざ和解してライセンス契約を結ぶと、今度は背後にいるスタジオミュージシャンから訴えられる事態となりました。
全米音楽家連盟(AFM)は6月5日、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)とワーナー ミュージック グループ(WMG)の2社を相手取り、ニューヨーク連邦地方裁判所に提訴しました。組合員が演奏した音源を、正当な対価の支払いやクレジット表記なしに、AI音楽生成サービスのSunoおよびUdioへライセンス提供したと主張しています。
AFMは金額を明示しない損害賠償を求めるとともに、どの音源がAIのトレーニングセットに投入されたのかを完全に開示するよう裁判所に命令を求めています。
労働協約の「二次使用」条項が争点に
問題の発端は、レコード大手とAIスタートアップとの間で2025年末に成立した一連の和解劇です。
2024年、アメリカレコード協会(RIAA)の主導のもと、UMG、WMG、ソニー・ミュージックの3社は大規模な著作権侵害を理由にSunoとUdioを提訴しました。しかし2025年10月下旬にUMGがUdioと和解し、ライセンス契約を締結。続いて11月にはWMGもUdioと和解し、その数日後にはSunoとも和解して傘下のライブ情報プラットフォームSongkickをSunoへ売却する取引までまとめました。
AFM側は、これらの契約が労働協約に定められた「二次使用(new use)」条項に該当すると指摘しています。この条項は、録音された実演が新たな商業目的で使用される際、レコード会社に対して演奏家への報酬支払いを義務付けるものです。
訴状によると、レコード大手は過去の和解金と将来の継続的ライセンス料という巨額の利益を確保しながら、その音源で演奏したミュージシャンには還元を拒み、どの楽曲が提供されたかの情報開示すら拒んでいるとされています。
これに対しUMGの広報担当者は、団体交渉の最中にAFMが訴訟という手段を選んだとしつつ、今後も交渉を通じて問題を解決していく姿勢を示しました。
なぜ重要か
生成AI時代における権利保護の議論は、これまで「著作権者対AI企業」という構図で語られがちでした。しかし今回の訴訟は、大手レーベルが手に入れた利益が現場の実演家にまったく行き渡っていないという、業界内部の歪みを白日の下に晒しています。
スタジオで伴奏を務めるセッションミュージシャンにとって、この問題は死活問題です。彼らは原盤権を持たないことが多く、労働協約による二次使用料こそが生活を支える命綱だからです。AIモデルの学習データとしての利用が二次使用と認められなければ、実演家は自身の仕事を奪うかもしれないアルゴリズムを無報酬で育成させられることになります。
レコード会社としては、強硬な訴訟でスタートアップを追い詰め、最終的にライセンス契約へと持ち込む戦略はビジネス上極めて巧妙でした。しかし非営利団体Music Artists Coalitionが早期から疑問を呈していたように、アーティストへの還元スキームを曖昧にしたまま進めた点に大きな落とし穴がありました。
裁判所がAI学習を「新たな商業利用」と認めれば、音楽業界だけでなく映像や執筆などあらゆるエンタメ分野の労働協約に波及するはずです。AI企業が支払うデータの正規ライセンス料は、今後さらに跳ね上がると見て間違いありません。
情報源 (1)
- musicbusinessworldwide.com(新しいタブで開きます)原文musicbusinessworldwide.com