マイクロソフトが教育向けAIを発表:Reading Coachを無償公開、Copilotの制限緩和も
マイクロソフトは教育向けAIの新機能を発表した。生成AIで物語を自動生成して発音などを指導する「Reading Coach」のプレビュー版を、Microsoftアカウント保持者向けに無償提供開始。あわせて「Copilot for Microsoft 365」の最低300シート制限を撤廃し、教育機関での導入ハードルを引き下げた。

子どもの音読練習ほど、教える側にとって根気のいる作業はありません。教員が一人ひとりの発音に付き合う時間は足りず、子どもは型通りの教科書を前にするとすぐに集中を切らしてしまいます。
Microsoft は教育分野に向けた AI 機能の最新アップデートを発表しました。その中でも特に注目されるのが、対話型 AI を組み込んで単体アプリ化された「Reading Coach」です。Microsoft アカウントさえあれば、Web ブラウザや Windows アプリから誰でも無料で利用できます。
物語の展開を選びながら発音を直す
Reading Coach はもともと教育機関向けに提供されていた発音学習ツールですが、今回そこに生成 AI が本格導入されました。
学習の流れはゲームブックに似ています。児童が主人公や舞台設定を選ぶと、AI がその場で物語を生成します。章を読み進めるごとに選択肢が現れ、子ども自身の手でストーリーを分岐させていく仕組みです。
賢いのは、裏側のアルゴリズムです。選択された難易度に合わせるだけでなく、児童がうまく発音できなかった単語を AI が自動で記録します。そして、続く章の文章の中にその苦手な単語をさりげなく再登場させ、繰り返し練習させます。安全性への配慮として不適切なコンテンツを遮断する仕組みが入っているほか、ReadWorks が監修した既存のレベル別文章を読むことも可能です。
学校現場での利用も見据えており、今春後半には Canvas などの主要な学習管理システムと連携する予定です。あわせて教育機関向けの Teams でも、授業カリキュラムの構成案や採点基準、課題の指示文を AI でワンクリック生成できる機能が年内に無償提供されます。
300席制限の撤廃と大学向け展開
教職員向けの環境整備も大きく動きました。
1月1日より教職員向けに「Copilot for Microsoft 365」の販売が始まっていましたが、今回新たに Office 365 A3 および A5 の顧客を対象とし、これまで設定されていた「最低300ライセンス」という購入制限が撤廃されました。小規模な学校や研究室単位でも導入できる環境が整いました。
さらに、商用データ保護が適用された Copilot は、無料プランを含むすべての教職員および18歳以上の高等教育機関の学生に開放されます。AI 共同作業ツールの Microsoft Loop も、3月初旬から A3・A5 プランに順次含まれる予定です。
なぜ重要か
私たちの見立てでは、Reading Coach は生成 AI を「宿題を代わりに書かせる道具」ではなく「子どもに自発的に声を出させる仕掛け」として成立させた秀逸な実例です。
これまでの発音判定ソフトは、正誤を機械的に突きつけるものが多く、子どもを萎縮させがちでした。ストーリー分岐と動的な語彙再出題を組み合わせたことで、練習そのものをゲームに変えています。家庭の保護者や小学校の語学指導者にとって、今すぐ試す価値が十分にあります。
業界全体で見れば、長年 Chromebook と Google ツールが支配してきた教育現場に対し、Microsoft が強烈なカウンターを当てにきたと見えます。大企業向けの高度なモデルを小規模校でも1席単位で買えるようにし、無料の学習支援ツールをばらまく戦略は、教育インフラの囲い込みとして非常に強力です。
懸念されるのは、課題作成から採点まで AI に委ねる「効率化の行き過ぎ」です。教員の負担軽減を謳う一方で、現場が AI に頼り切れば、教育内容の均質化や思わぬハルシネーションの混入を招く恐れがあります。教育の質を保つ最後の砦として、現場の教員がどこまで介入を維持できるかが問われます。
情報源 (1)
- educationblog.microsoft.com(新しいタブで開きます)原文educationblog.microsoft.com