Microsoft、Copilot Researcherにマルチモデル協調機能「Critique」と「Council」を追加
Microsoft は Microsoft 365 Copilot の調査エージェント「Researcher」に Critique と Council を追加した。OpenAI や Anthropic のモデルで生成と校閲を分担させ、DRACO ベンチマークで 13.8% の精度向上を達成。複数モデルの回答を並べて比較することも可能になった。

深いリサーチレポートを作成する際、最も厄介なのは情報の少なさではなく、自分自身の思い込みです。AIモデルも同様で、1つのモデルに調査から執筆、推敲までを任せると、誤った前提や見落としを自力で修正できなくなる傾向があります。
Microsoft は Microsoft 365 Copilot の調査エージェント「Researcher」に向け、マルチモデル協調を活用した新機能「Critique」と「Council」を発表しました。単一モデルに頼る従来の手法から脱却し、OpenAI や Anthropic など複数のフロンティアモデルを組み合わせたチームプレイへと舵を切っています。
生成と査読を切り離す「Critique」
新機能「Critique」のアプローチは明快です。コンテンツの「生成」と「評価」を完全に分離しました。
従来の調査エージェントは、タスクの計画、情報検索、統合、執筆を1つのモデルで処理していました。これに対して Critique では、第1のモデルが探索や構造化、初稿の執筆を担当し、第2のモデルが査読者として内容の検証と推敲に専念します。
査読モデルは学術論文のレビューのように、情報源の信頼性評価、レポートの網羅性の確認、そして厳格な根拠付けの3つの観点で初稿をチェックします。主張が確かな情報源に裏付けられているかを厳密に確認した上で最終レポートを出力する仕組みで、モデル選択で Auto を選んだ場合のデフォルト設定となります。
Perplexity と研究者コミュニティが 2026 年 2 月に発表した深層調査ベンチマーク「DRACO」による検証では、OpenAI の GPT-5.2 を評価ジャッジとして測定した結果、単一モデルの構成に比べて総合スコアが 13.8% 向上しました。
特に分析の広さと深さでプラス 3.33 点、表現の質でプラス 3.04 点、事実の正確性でプラス 2.58 点の向上が見られ、いずれも統計的に有意な改善が確認されています。
複数モデルの知見を比べる「Council」
Critique がバックグラウンドで相互検証を行うのに対し、前面で各モデルの回答を比較できる機能が「Council」です。
ビジネスの複雑な課題には正解が1つとは限りません。Council では異なるモデルの分析結果を画面上に並べて表示し、どこで合意が形成され、どこで意見が分かれているか、それぞれのモデル独自の洞察は何かをまとめたカバーレターを提供します。
あわせて Microsoft は、長時間の反復作業をこなす「Copilot Cowork」を Frontier プログラム向けに提供開始したことも公表しました。Claude Cowork を支える基盤技術を導入しており、Capital Group などの企業が予算レビューや役員報告の準備で先行活用を進めています。
なぜ重要か
企業アナリストやリサーチ業務を抱える実務担当者にとって、AI 生成レポートの最大の障壁はハルシネーションと裏取りの手間でした。自分で調べ直すくらいなら最初から書いたほうが早いという場面も少なくありません。生成役と査読役を別々のフロンティアモデルに分担させる設計は、そうしたAI特有の盲点を補い、実務で使えるレポートの完成度を一段引き上げています。
業界全体から見ても、今回の動きは象徴的です。Microsoft は OpenAI の筆頭パートナーでありながら、自社のエンタープライズ製品には Anthropic を含む他社モデルを柔軟に組み込み始めています。特定のモデル1つですべてをこなす時代から、複数の有力モデルを用途に応じて競わせ、協力させるマルチモデル運用が今後の標準になっていくと考えられます。
ただし、複数の大規模モデルを順番に走らせて相互検証を行う以上、回答の生成にかかる時間とコストの増加は避けられません。意思決定に直結する重要な調査には十分見合う投資ですが、日常的なちょっとした調べ物であれば、従来の単一モデルによる高速な処理で十分使い分ける必要がありそうです。
情報源 (2)
- techcommunity.microsoft.com(新しいタブで開きます)原文techcommunity.microsoft.com
- microsoft.com(新しいタブで開きます)報道microsoft.com