米規制当局の目を警戒:マイクロソフトがOpenAI取締役会のオブザーバー席を返上、アップルも辞退
報道によると、米マイクロソフトはOpenAIの取締役会オブザーバー席を退任し、アップルも予定していた同席への参加を取りやめました。米欧の独占禁止当局によるAI提携への監視強化を受けた動きです。両社とも取締役会からは退くものの、OpenAIとの提携関係自体は継続します。

独占禁止法規制の包囲網が狭まる中、巨大テック企業が OpenAI の取締役会から一斉に足を引き始めました。
Microsoft は現地時間火曜日の夜、OpenAI の取締役会における無議決権のオブザーバー席を即時辞任すると通知しました。先週、幹部の Phil Schiller を同様のオブザーバーに就任させると報じられていた Apple も参加を撤回。OpenAI は今後、オブザーバー席自体を廃止すると発表しました。
表向きは円満な体制移行ですが、米欧の規制当局による監視が本格化する中での明確な「火消し」の動きです。
形式的な席を捨てた Microsoft と Apple
Microsoft がこのオブザーバー席を獲得したのは、昨年 11 月に Sam Altman が CEO を解任され、わずか数日で電撃復帰した騒動の直後でした。130 億ドル規模の資金とクラウドインフラを投じ、将来的に最大 49% の株式取得の可能性を持つ筆頭出資者として、ガバナンスの監視役を務めてきました。
Microsoft の法務担当幹部 Keith Dolliver は書簡の中で、過去 8 カ月間で新取締役会は目覚ましい進展を遂げ、会社の方向性に自信を持っているため、限定的なオブザーバーの役割はもはや不要になったと説明しています。
OpenAI 側も Microsoft の信頼表明に感謝する声明を発表しました。今後はオブザーバーを置く代わりに、Microsoft や Apple などの戦略パートナー、Thrive Capital や Khosla Ventures といった主要投資家と定期的に対話する新体制を設けるとしています。
Apple も素早く身を引きました。先月、iPhone や Mac の新機能 Apple Intelligence で Siri や文書編集ツールに ChatGPT を連携させると発表したばかりで、オブザーバー席の獲得が見込まれていましたが、Financial Times によれば計画を取りやめました。
強まる米欧当局のプレッシャー
この電撃撤退の引き金となったのは、急速に厳しさを増す独禁法当局の視線です。
米連邦取引委員会(FTC)は 6 月初頭、Microsoft が規制審査を回避しながら OpenAI を実質的に支配する仕組みを構築していないか調査を開始したと報じられました。さらに欧州連合(EU)の競争政策担当トップも先月下旬、両社の提携に含まれる排他的条項を巡って調査に乗り出す可能性を言及しています。
議決権のないオブザーバー席であっても、取締役会への同席は当局から「事実上の支配」と見なされる格好の標的になります。現在の OpenAI 取締役会には Bret Taylor 議長をはじめ、Larry Summers 元米財務長官や元 NSA 長官の Paul Nakasone など大物が揃っており、Microsoft にとっては形の上で手を引く口実が整っていました。
なぜ重要か
一般ユーザーや開発者にとって、この変更による直接的な不利益は当面ありません。Azure と OpenAI のインフラ連携は維持され、年内に予定されている iPhone や Mac への ChatGPT 統合もそのまま進む見込みです。
一方で業界全体にとっては、資金とクラウドの提供を通じて新興 AI 企業を自社エコシステムに実質的に組み込むという、これまでのビッグテックの常套手段が限界に達したことを示しています。規制当局は、AI 分野における巨大企業の囲い込みを厳格に阻止する構えです。
今回の両社の判断は、実利を手放さずに目立つ標的だけを取り除く極めて抜け目のない戦術だと評価できます。議決権のない席を降りたところで、両社が持つ影響力や提携関係が損なわれるわけではありません。
しかし、これはあくまで表面的な偽装に過ぎないとも言えます。巨額のクラウド契約や独占的な収益分配といった本質的な癒着構造が温存されている以上、規制当局の追及がこれで収まるとは考えにくく、今後は契約書の細部へと切り込む厳しい調査が続くはずです。
情報源 (3)
- bloomberg.com(新しいタブで開きます)原文bloomberg.com
- siliconangle.com(新しいタブで開きます)報道siliconangle.com
- axios.com(新しいタブで開きます)報道axios.com
トピックを追うAppleの生成AI戦略
- アップル、OpenAIへの出資協議から離脱か
- AppleがOpenAIへの出資を交渉中:企業価値は1000億ドル超へ
- 米規制当局の目を警戒:マイクロソフトがOpenAI取締役会のオブザーバー席を返上、アップルも辞退この記事
- Apple、OpenAIの取締役会オブザーバー枠を獲得へ シラー氏が就任見込み
- アップル、今秋にもGoogle Geminiの導入を発表か