アップル、OpenAIへの出資協議から離脱か
The Wall Street Journalの報道によると、アップルはOpenAIが来週完了を目指す最大65億ドル規模の資金調達ラウンドへの出資交渉から離脱した。マイクロソフトが約10億ドルを追加出資する見込みの一方、アップルは直前で見送った形だ。なお、iOS 18へのChatGPT統合といった提携関係に変更はない。

アップルは、自社の巨大なエコシステムが持つ集客力で解決できる問題に対して、わざわざ現金を差し出すような真似はしません。
同社がシリコンバレーの有力企業に巨額出資するという異例の動きが注目を集めていましたが、事態は急転しました。The Wall Street Journalの報道によると、アップルはOpenAIの最新資金調達ラウンドへの参加交渉から撤退したとのことです。このラウンドは最大65億ドル規模に達する見込みで、来週にも完了する予定でした。
65億ドルの調達ラウンドから直前で離脱
アップルがOpenAIへの出資を検討しているという話は先月報じられたばかりで、具体的な出資額は明らかにされていませんでした。しかし関係者によると、契約完了を目前にしたギリギリの段階で交渉が決裂したといいます。
一方で、OpenAIの主要支援者であるマイクロソフトは今回のラウンドでさらに約10億ドルを追加出資する見込みです。マイクロソフトはすでにOpenAIの利益分配権の49パーセントを握っています。また、エヌビディアも出資を検討しているとされています。
今回の撤退劇は、OpenAI内部で経営陣の離脱や組織再編が続く慌ただしい時期に重なりました。皮肉なことに、アップルの元最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブ氏は最近、OpenAIと共同でAIハードウェア製品の開発に取り組んでいることを明かしたばかりです。
現金は出さず、巨大な露出を提供する関係
出資は見送られたものの、両社の提携関係そのものが終わるわけではありません。iOS 18にChatGPTを統合し、Siriが一般的な知識の質問をChatGPTに引き継ぐ機能は、予定通り年内に提供される見込みです。
この提携において、両者の間で金銭のやり取りが発生していないことは以前ブルームバーグも報じていました。アップルはOpenAIに利用料を払っておらず、OpenAIも掲載料を払っていません。何億台ものiPhoneで使われることによる露出効果は、現金と同等かそれ以上の価値があるという理屈です。
一部の開発者やコミュニティからは、アップルが出資を見送ったのは賢明だという声も上がっています。コーディング性能で優れるAnthropicなど、他社モデルの台頭もある中で、1社に縛られる必要はないという見方です。
なぜ重要か
一般のiPhoneユーザーにとって、今回の撤退による実害はありません。iOS 18でのChatGPT連携は予定通り利用でき、機能面での変更もないとみられます。
しかしAI業界全体にとって、アップルのこの選択は極めて象徴的です。マイクロソフトがさらに10億ドルを投じてOpenAIとの同盟関係を深める一方、アップルはあえて距離を保ちました。特定の大手AI企業と資本関係を結ばないことで、将来的にGoogle Geminiや他のモデルへ乗り換えたり、併用したりする自由度を確保したと言えます。
アップルの判断は非常に現実的で賢いものに見えます。OpenAIが幹部流出や営利法人化の揺らぎの中にあり、独占禁止法の監視も強まる中、巨額の出資を行うリスクは小さくありません。自社端末の圧倒的な普及台数を武器に、無償で最新モデルの機能をユーザーに届けられるのであれば、株主になる理由は薄いからです。
ただ、資本の結びつきがない純粋なパートナーシップは、関係の脆さと表裏一体です。今後、最先端モデルの開発コストが跳ね上がり、AI開発企業側の立場が強くなった場合、露出効果の提供だけでどこまで有利な条件を維持できるかは今後の課題になりそうです。
情報源 (1)
- 9to5mac.com(新しいタブで開きます)原文9to5mac.com