Metaのルカン氏、「AIによる人類滅亡論は荒唐無稽」と一蹴
Meta のチーフ AI サイエンティストであるヤン・ルカン氏が英紙の取材で、AI による人類滅亡論は「荒唐無稽」だと反論した。現在のモデルは世界を理解しておらず猫の学習能力にも及ばないと指摘し、性急な規制はビッグテックの独占を強めて自由な競争を阻害するだけだと警鐘を鳴らしている。

生成AIが人類を滅ぼすという終末論が過熱するなか、MetaのチーフAIサイエンティストであるヤン・ルカン氏が真っ向から反論しました。
英フィナンシャル・タイムズが10月19日に報じたインタビューで、ルカン氏はAIが人類を絶滅させるという言説を「ばかげている」と一刀両断し、実存的リスクを議論すること自体が時期尚早だと語りました。
猫の学習能力にすら及ばない現在のAI
ルカン氏の主張は明快です。現在の技術は、世間が恐れているような自律的な知能からはほど遠い段階にあります。
同氏は、学習能力において猫に匹敵するシステムすら設計できていない現状で、人類滅亡のリスクを議論するのはあまりにも早すぎると指摘しました。
現在普及している大規模モデルについても、一般に信じられているほどの能力はないと見ています。現実世界がどのように機能しているのかを理解しておらず、真の推論や計画を立てる能力も備わっていないというのが同氏の評価です。
この姿勢は、業界内で広がる警戒論とは完全に対照的です。OpenAIがChatGPTを公開して以来、AIの脅威を訴える声は急速に強まりました。
「AIのゴッドファーザー」と呼ばれるジェフリー・ヒントン氏は、その危険性を自由に訴えるためにGoogleを離職しました。Center for AI Safetyのダン・ヘンドリックス氏も5月に、AIによる絶滅リスクへの対策はパンデミックや核戦争と同等の優先課題にすべきだと主張し、英国のAIタスクフォース顧問に至っては2年以内に脅威が現実化しかねないと警告しています。
安全規制を隠れ蓑にした寡占の危機
ルカン氏が技術的な終末論以上に警戒しているのが、性急な法規制の動きです。
同氏はAIの研究開発を今すぐ規制することは逆効果であり、安全性を口実にした「規制の虜(捕獲)」が進んでいると指摘しました。
未熟な段階で重い規制を敷いてしまえば、資金力のある巨大テック企業の優位性が固定化され、スタートアップやオープンソースによる自由な競争の余地が奪われてしまうという懸念です。
一方で、ルカン氏はAIの未来そのものを否定しているわけではありません。将来的にAIは人々の日常生活を支援するようになり、デジタル世界とのやり取りのすべてを仲介する不可欠なインフラになると予測しています。
なぜ重要か
私たちは、ルカン氏の指摘が現在のAI議論における最大の矛盾を突いていると考えます。
スタートアップや一般の開発者にとって、この問題は死活問題です。もし終末論的な恐怖に駆られた各国政府が、モデル開発そのものに重い許認可制を導入すれば、膨大な法務コストを払える一握りの大手企業だけが生き残ることになります。オープンソースによる健全な技術普及を阻むことこそが、最も現実的なリスクと言えます。
業界全体にとっても、この発言はAI観の決定的な断絶を浮き彫りにしています。ヒントン氏らが現在のアーキテクチャの急速な進化に危機感を募らせる一方、ルカン氏は常識も物理理解も持たない言語モデルの限界を冷静に見定めています。
架空の危機に目を奪われて現実の競争環境を歪めてしまうことこそ、私たちが警戒すべき事態だと見受けられます。現時点で存在しない脅威を理由に参入障壁を築かせるのではなく、開かれた技術開発を維持することの重要性を再認識させる発言です。
情報源 (1)
- cointelegraph.com(新しいタブで開きます)原文cointelegraph.com
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