IBM、量子プロセッサ「Heron」を50倍高速化 Graniteによるコード生成AIも導入
IBMは量子プロセッサ「Heron」と「Qiskit」ソフトウェアの機能強化を発表した。最大5,000回の2量子ビットゲート操作に対応し、従来のベンチマーク処理時間を112時間から2.2時間へと約50倍短縮した。またGraniteモデルを活用した量子コード生成AIなどの支援機能も統合される。
量子コンピューティングにおいて、回路を深く組むほどエラーが急増し、演算完了までに何日も待たされるという課題は長年つきまとってきました。
米IBMは最新の量子プロセッサー「Heron」と制御ソフトウェア「Qiskit」の進化により、特定の量子回路において最大5000個の2量子ビットゲート操作を実行可能にしたと発表しました。
112時間から2.2時間へ、処理速度が50倍に
量子計算において、2量子ビットゲートは最もエラーが発生しやすく、計算時間も消費する難所です。
IBMが2023年に実施した「量子有用性」の実証実験では、反転キックド・イジング模型の回路を動かすのに112処理時間を要していました。
今回の最新Heronプロセッサーでは、当時の約2倍に相当する最大5000ゲートの回路をわずか2.2時間で完了させました。IBMによると、これは実に50倍の高速化にあたります。
IBM Quantum担当バイスプレジデントのJay Gambetta氏は、ハードウェアとQiskitの進歩により、高度な量子資源と従来のスーパーコンピューターを連携させ、双方の強みを融合させた新アルゴリズムの構築が可能になると説明しています。
生成AIの導入とパートナー連携の強化
今回の発表では、ハードウェアの速度向上だけでなく、開発環境の拡充にも力が入れられています。
IBM Quantum Platformには、同社の基盤モデル「Granite」をベースにしたCode Assistantが導入され、量子コードの自動生成に対応しました。
さらに、AIを活用して量子回路をハードウェア向けに最適化する「Qiskit Transpiler Service」や、サーバーレスで計算を実行する基盤も提供されます。
ノイズ低減やアルゴリズム開発を支援するため、Q-CTRLやAlgorithmiq、Qedma、QunaSys、Multiverse Computingといったパートナー企業のサービスを集めた「Qiskit Functions Catalog」も展開されます。
なぜ重要か
IBMの今回の動きは、量子計算の開発競争が「単なる量子ビット数の誇示」から「実用的なスループットの向上」へと移行していることを示しています。
材料科学、化学、創薬、高エネルギー物理学の現場にとって、112時間かかっていた検証が2.2時間で終わる意味は極めて大きく、研究の試行錯誤サイクルを現実的な時間枠に収めることができます。
また、完全な誤り耐性量子コンピューターを待つのではなく、生成AIやクラシカルなスパコン、さらにはノイズ制御を手がけるスタートアップのソフトウェアを組み合わせて現行機を使い倒すアプローチは非常に合理的です。
一方で注意すべきは、この5000ゲートの実証が現状では特定の物理シミュレーション回路に限られている点です。一般的な汎用計算がすぐに実用化されるわけではありませんが、最先端の基礎研究ツールとしては、いよいよ現場で触る価値のある水準に達しつつあります。
情報源 (1)
- ndtvprofit.com(新しいタブで開きます)原文ndtvprofit.com