Google、創薬特化のオープンモデル群「TxGemma」を公開
Googleは創薬・治療法開発に特化したオープンモデル群「TxGemma」を公開した。Gemma 2をベースに開発され、2B、9B、27Bの3サイズで予測特化版と対話版を提供する。最大サイズの27B予測版は、66の創薬タスク中64項目で先行モデルと同等以上の性能を示している。

TxGemmaは、Googleが公開した創薬および治療薬開発向けのオープン言語モデル群です。標的分子の同定から化合物の毒性予測、臨床試験の結果予測まで、医薬品開発に関わるデータ分析を支援するために設計されています。
本モデルはGoogle DeepMindのオープンモデル「Gemma 2」をベースに、700万件の創薬・生物医学データを用いてファインチューニングされたものです。Googleが昨年10月に発表した創薬特化モデル「Tx-LLM」のオープンな後継版という位置づけで、研究者が自前データに合わせて改変できる実用的な規模に落とし込まれています。
何ができるのか
TxGemmaは2B、9B、27Bの3種類のパラメータサイズで展開されており、ローカル環境から本格的なクラスタまで利用規模に合わせて選択できます。
全サイズに用意されているのが予測特化型の「predict」バージョンです。Therapeutic Data Commonsから抽出された特定タスク向けに調整されており、分子の毒性予測などを高精度に行います。
さらに9Bと27Bには対話型の「chat」バージョンも用意されています。一般的な指示調整データを加えて学習させているため、なぜその分子に毒性があると判定したのかといった推論の根拠を、分子構造に基づいて解説させることができます。なお、この対話能力を持たせる代償として、純粋な予測精度はpredict版に比べてわずかに低下します。
モデル構成とベンチマーク性能
性能面では、最上位の27B predictモデルが極めて高いスコアを記録しています。ベンチマークの全66タスク中64タスクにおいて、前世代のTx-LLMと同等以上の性能を示し、そのうち45タスクでTx-LLMを上回りました。
さらに、単一タスク専用に作られた特化型モデルとの比較でも、50のタスクで同等以上の成績を収め、26タスクでは特化型モデルを打ち負かしています。
また、単発の予測だけでなく、Gemini 2.0 Proを中核にして18の外部ツールを束ねたエージェントシステム「Agentic-Tx」との連携も示されています。この構成により、ChemBenchやHumanity's Last Examといった高度な推論を要するバイオ・化学ベンチマークで最高水準の結果を達成しています。
入手方法と動かし方
TxGemmaのモデル重みは、Hugging FaceおよびVertex AI Model Gardenから今すぐダウンロード可能です。
推論コードに加え、治験有害事象の予測を題材にしたTrialBenchデータセットによるファインチューニング手順や、Agentic-Txのワークフローを体験できるColabノートブックも公開されています。
なぜ重要か
新薬の開発は莫大なコストと時間がかかり、フェーズ1以降の治験でも約9割が脱落する厳しい世界です。TxGemmaが価値を持つのは、これまで巨大テックや大手製薬に閉じがちだった高度な予測モデルを、誰でも自前の環境で動かせるオープンウェイトとして解放した点にあります。独自の化合物データを持つバイオベンチャーや研究室が、機密データを外部APIに送ることなく9Bや27Bを自前で追加学習できる意義は小さくありません。
もちろんLLMによる予測はウェットな実験を完全に置き換えるものではなく、スクリーニングの優先順位付けや仮説検証の補助にとどまります。それでも、オープンソースの創薬基盤モデルとしてここまで完成度と実用性の高い選択肢が出てきたことは、計算創薬の民主化を着実に前進させる動きだと言えます。
情報源 (1)
- developers.googleblog.com(新しいタブで開きます)原文developers.googleblog.com