本文へスキップ
IFAI

業界動向

米FTCが著作権局に異例の意見書提出:生成AIの無断学習に警告

公開 拡散指数 31

米連邦取引委員会(FTC)が米著作権局に異例の意見書を提出しました。AI学習での無許諾データ利用や作家の模倣が「フェアユース」と主張されても、消費者保護法や独占禁止法違反になり得ると警告。一方、業界団体からは権限の逸脱だと批判の声が上がっています。

米FTCが著作権局に異例の意見書提出:生成AIの無断学習に警告
画像:venturebeat.com

生成AI企業が最も恐れていたのは、連邦裁判所で著作権者と争う「フェアユース(公正利用)」をめぐる訴訟でした。しかし、米連邦取引委員会(FTC)が全く別の角度からこの問題に介入してきました。

2023年8月からAIと著作権に関する調査と意見募集を進めている米著作権局に対し、FTCは異例のパブリックコメントを提出しました。そこでFTCは、著作権法上は適法とみなされる行為であっても、消費者保護法や競争法に違反する可能性があるという見解を打ち出しました。

フェアユースでもFTC法違反になり得る

FTCは伝統的に著作権そのものを管轄してきたわけではありません。しかし今回の提出書類で同庁は、現行法においてAIに対する例外規定は存在しないと強調し、あらゆる権限を行使する姿勢を示しました。

FTCが問題視している主な論点は2点あります。1つ目は消費者欺瞞です。生成AIがアーティストの顔や声、演技を無断で模倣し、消費者が本人の作品だと誤認した場合、欺瞞行為に当たると指摘しました。

2つ目は不正競争です。多くのAIモデルが無断でスクレイピングされた海賊版コンテンツで学習されている点に触れ、FTC法第5条が禁じる不公正な商慣行や不公正な競争方法に該当し得ると主張しました。さらに、オープンAIやアンソロピックなどが裁判で主張しているフェアユースの抗弁についても、著作権法上でフェアユースが認められたとしてもFTC法違反の免責にはならないと釘を刺しました。

業界団体は反発、権限逸脱を主張

この踏み込んだ姿勢に対し、テクノロジー業界からは強い反発の声が上がっています。IT業界団体チェンバー・オブ・プログレスの最高経営責任者アダム・コバセビッチ氏は、VentureBeatの取材でFTCの越権行為を厳しく批判しました。

コバセビッチ氏は、FTCの設立規章には著作権に関する文言は一切なく、著作権の判断は司法の管轄であると指摘しました。今回の見解はリナ・カーン委員長による職権拡大の試みだとみています。

さらに同氏は、フェアユースこそが本来の反独占メカニズムだと反論しました。著作権は独占権であり、既存の巨人を打破しようとする新興スタートアップには膨大なライセンス料を支払う資金がありません。フェアユースを骨抜きにすることは、スタートアップの参入障壁を高める結果になると訴えています。

なぜ重要か

私たちは、FTCのこの動きがAI開発者にとって法的なリスク構造を根本から変える一石になるとみています。

これまでの生成AIビジネスは、裁判所で学習データのスクレイピングがフェアユースと認められればクリアできるという前提で動いていました。しかしFTCの論理に従えば、著作権訴訟に勝利したとしても、海賊版サイトからのデータ取得や特定クリエイターの無断模倣を理由に、FTCから不公正競争や消費者欺瞞として摘発されるリスクが残ることになります。

皮肉なのは、競争促進を掲げるFTCの姿勢が、かえって巨大テック企業を利する恐れがある点です。もしデータの無償利用が難しくなり包括的なライセンス契約が前提となれば、資金力のある大手しかモデル開発を継続できなくなります。スタートアップを保護するはずの競争当局が、結果としてスタートアップの首を絞める構図になりかねません。

AIツールを活用するクリエイターや企業にとっては、学習元の透明性やAI生成表記の重要性が一段と増した格好です。単なる著作権侵害リスクの管理にとどまらず、消費者を誤認させていないかという観点でのコンプライアンス設計が急務になりそうです。

情報源 (1)

  1. [1]
    venturebeat.com(新しいタブで開きます)原文venturebeat.com

毎日のAIピックアップ