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研究

芝加哥大がAI皮膚パッチを開発:通信なしで不整脈を即時検知

公開 拡散指数 34

シカゴ大学などの研究チームは、体表面で直接AI計算を実行できる伸縮性皮膚パッチを開発しました。外部サーバーを経由せず数ミリ秒で健康データを処理し、実験では心室細動の波面を99.6%の精度で特定。1.5倍以上に伸ばしても機能し、緊急性の高い心不整脈の即時検知に道を開きます。

芝加哥大がAI皮膚パッチを開発:通信なしで不整脈を即時検知
画像:scitechdaily.com

スマートウォッチで心拍数や睡眠を測るとき、データはいったん手首から外部サーバーへ送られ、クラウド側で解析されて手元に戻ってきます。普段のヘルスケアなら数秒の遅れは問題ありませんが、命に関わる心臓発作が起きたとき、その通信のタイムラグが生死を分けることがあります。

シカゴ大学分子工学部(UChicago PME)とアルゴンヌ国立研究所の研究チームは、体に直接貼り付け、ミリ秒単位で健康データをAI処理できる伸縮性のコンピューティングパッチを開発しました。英科学誌『Nature Electronics』に論文が掲載されています。

脳のシナプスを模した柔らかいトランジスタ

人間の皮膚は伸び縮みするため、硬い従来のシリコンチップを貼り続けるのには無理があります。研究チームが採用したのは、有機電気化学トランジスタ(OECT)と呼ばれる素子です。

このトランジスタは、電流だけでなくゲル状電解質の中をイオンが移動することで情報を処理します。イオンの移動履歴が残るため素子自体が記憶を持ち、脳の神経シナプスが学習パターンを蓄える仕組みによく似ています。

課題は製造の難しさにありました。ゲル状の電解質は液体のようにながれやすく、隣同士がくっついてショートしがちです。また、柔軟な素材は熱や溶剤に弱く、通常の半導体製造ラインに乗せられませんでした。

チームは紫外線(UV)を当てると精密に硬化するポリマーゲルを開発し、マイクロエレクトロニクス業界の標準技術であるフォトリソグラフィを使えるようにしました。これにより、1平方センチメートルあたり最大1万個の有機電気化学トランジスタを高密度に配置することに成功しています。

1.5倍に伸ばしても99.6%の精度で心電波を特定

このパッチの実用性を試すため、研究チームは心室細動の治療を支援する学習済みアルゴリズムを実行させました。心室細動は電気信号の乱れによって引き起こされ、放置すれば死に至る危険な不整脈です。

従来の治療法は心臓全体に強力な電気ショックを与える除細動が主流ですが、異常な電気の波面をミリ秒単位で追跡し、広がる前に微弱なパルスで抑え込むピンポイント治療が研究されています。ただし、波の伝播が速すぎるため、クラウドへデータを送っていては到底間に合いません。

提供された人間の心臓データを用いたテストでは、パッチを元の長さの1.5倍以上に引き伸ばした状態でも、99.6%の精度で異常波面の発生箇所を特定できました。さらに別のテストでは、コレステロール、血糖値、最大心拍数、心電図などの個人データを解析し、心筋梗塞のリスクを83.5%の精度で予測しています。

なぜ重要か

現在のウェアラブル機器は「データを集めてクラウドに送るセンサー」に過ぎず、通信遅延や個人情報の送信リスクが常に付きまといます。この研究は、AIの推論処理そのものを生体に近い柔らかいシート上で完結させるオンボディ・エッジコンピューティングの可能性を実証しました。

ただし、いますぐ市販製品に載るわけではありません。心臓リスク予測の精度83.5%は医療機器として使うには改善の余地があり、長期間皮膚に貼った際の耐久性や生体適合性、電源をどう確保するかという課題も残っています。

私たちが注目すべきだと考えるのは、まったく新しい特殊な装置をゼロから作るのではなく、既存の半導体露光技術を流用できる材料設計に落とし込んだ点です。柔軟なニューロモルフィック回路の実用的な量産に道を開いたことで、将来のウェアラブルや体内埋め込み機器の設計思想を根本から変える力を持っています。

情報源 (1)

  1. [1]
    scitechdaily.com(新しいタブで開きます)原文scitechdaily.com

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