DeepSeek、「DeepSeek-V4-Pro」を正式公開 3段階の推論設定とAPIの「夜間割引」を導入
DeepSeekは「DeepSeek-V4-Pro」の一般提供を開始した。エージェント性能を大幅に引き上げたほか、推論強度をlow、high、maxの3段階で調整可能。OpenAI Responses APIにも対応し、夜間オフピーク時にAPI料金が半額になる新価格体系も打ち出した。
業務ワークフローでAIエージェントを回している現場にとって、最大の悩みは知能の限界よりもむしろ膨れ上がるAPIコストです。
そんな中、DeepSeekは8月13日、フラッグシップモデル「DeepSeek-V4-Pro」の一般提供(GA)を開始しました。本番運用におけるエージェント性能を大幅に引き上げつつ、料金体系にも踏み込んだ改定を行っています。
1.7兆パラメータの巨体と、3段階の「推論ブレーキ」
DeepSeek-V4-Proは、1.7兆パラメータを誇るMixture of Experts(MoE)モデルです。生モデルのサイズは893GBに達し、推論高速化技術として「D-Spark」投機的デコーディングを新たに導入しました。
実用面で大きな目玉となるのが、柔軟な推論設定です。V4-Proおよび軽量版のV4-Flashでは、推論強度をlow(単純作業向け)、high(日常的なエージェント作業向け)、max(複雑タスク向け)の3段階から手動で選択できます。
Web版や公式アプリでは「Expert Mode」から手軽に試すことができ、API側のモデル識別名も従来通り据え置きとなっています。
さらにOpenAI Responses APIのネイティブサポートが追加され、Codex向けにワンクリックで最適化設定が完了する仕様になりました。既存のOpenAI環境からの移行ハードルは極めて低く抑えられています。
1タスクあたりわずか6セント、夜間はさらに半額
Humanity's Last Exam、Terminal Bench、DeepSueといった知識やエージェントコーディングのベンチマークにおいて、V4-ProはオープンモデルのGLMやKimiko 3、さらにはClaude Opusといった主要な商用モデルと肩を並べる水準を示しています。
独立系調査機関Artificial Analysisのリーダーボードによると、V4-ProはGLM 5.2と同等、Kimiko 3のわずかに下につけており、GPTやGrok 4.6といった最高峰の商用モデルに数ポイント差まで迫っています。
しかし、決定的な差がついたのはコスト面です。同社の計測では、1タスクあたりの費用はわずか6セントに抑えられており、GPT-5.6やKimiko 3、高価格帯のClaudeモデルを圧倒しています。
さらにDeepSeekは、協定世界時8月16日16時から適用される新価格体系として「ピーク/オフピーク」料金を新設しました。オフピーク時間帯のAPI利用料は一律50%割引となり、バッチ処理や夜間の自動ワークフローは通常の半額で稼働可能になります。
なぜ重要か
今回のアップデートは、単なるベンチマーク競争から一歩抜け出し、商用運用の実利に徹底的に照準を合わせた見事な戦略だと考えられます。
開発者にとって、エージェント運用の最大のリスクはコストの予測不能性でした。3段階の推論切り替えにより無駄な計算を省けるうえ、オフピーク半額の導入で、即時性を求めない大量バッチ処理の費用対効果は劇的に改善します。
ただし、課題も明確です。893GBという素のモデルサイズは一般的な環境では動かせず、自前ホストには高価なアクセラレータクラスタが必須となります。もっとも、UnslothなどのコミュニティがすでにGGUF等の量子化版の準備を進めており、軽量に動かしたいユーザーもそう長く待たされることはないはずです。
競合他社にとっても強烈な揺さぶりとなるでしょう。1タスク6セントという破格の単価に夜間半額まで上乗せされたことで、高額なプロプライエタリモデルを契約し続ける合理性を問い直す企業が確実に増えそうです。
情報源 (2)
- api-docs.deepseek.com(新しいタブで開きます)原文api-docs.deepseek.com
- youtube.com(新しいタブで開きます)報道youtube.com