Google DeepMind、1分未満で10日先を予測する気象AI「GraphCast」を発表
Google DeepMindは10日間の全球気象予測を1分未満で計算するAIモデル「GraphCast」を発表し、Science誌に論文を掲載した。業界標準のHRESを90%以上のテスト項目で上回り、台風などの異常気象も早期に捉える。コードはオープンソースとして公開された。
GraphCastは、Google DeepMindがオープンソースとして公開した全球中期気象予測AIモデルだ。1台のGoogle TPU v4マシンを使い、今後10日間の全球気象予測を1分未満で完了できる。
研究成果はScience誌に掲載された。気象業界の標準とされるヨーロッパ中期気象予報センター(ECMWF)の高解像度予測システム「HRES」との比較検証では、1380項目の検証変数と予測期間のうち90%以上でGraphCastがより高い精度を記録した。地表付近で最も重要な大気層である対流圏(高度6〜20km)に限ると、勝率は99.7%に達する。
何ができるのか
GraphCastは地球表面を0.25度の緯度経度グリッドに分割する。赤道付近でおよそ28km四方に相当し、地球全体で100万以上のグリッドポイントをカバーしている。
各グリッドにおいて、地表の5つの変数(気温、風速・風向、海面気圧など)と、高度37層における大気の6つの変数(比湿、気温、風速・風向など)を予測する。
日常的な気象だけでなく、極端な気象現象の早期検知でも優れた性能を発揮する。極端気象に特化した訓練を受けていないにもかかわらず、シンプルな追跡アルゴリズムを組み合わせるだけで、HRESよりも正確にサイクロンの進路を予測できる。
2023年9月にECMWFのウェブサイト上で行われた実運用テストでは、ハリケーン「リー(Lee)」がカナダのノバスコシア州に上陸することを約9日前に予測した。従来の数値予報モデルが上陸地を特定できたのは約6日前だったため、リードタイムを約3日早めたことになる。
このほか、豪雨や洪水をもたらす大気河川の強度判定や、過去最高気温を超える熱波の兆候を前もって捉えることも可能だ。
仕組みと動作環境
従来の数値予報(NWP)は、流体力学などの物理方程式をスーパーコンピュータで数時間かけて解く仕組みだった。科学的な信頼性は高いものの、膨大な計算リソースと専門知識を必要とする。
GraphCastはアプローチを変え、空間構造データの扱いに適したグラフニューラルネットワーク(GNN)を採用した。ECMWFの過去40年分の気象再解析データ「ERA5」を学習し、地球の大気変化における因果関係を深層学習で捉えている。
学習には膨大な計算資源が投じられたが、完成したモデルの推論は極めて軽量だ。10日分の全球予測を生成するのに必要なハードウェアはGoogle TPU v4が1台のみで、所要時間は1分に満たない。
モデルコードはすでにオープンソースとして公開されており、ECMWFでもリアルタイム予測実験が進められている。
なぜ重要か
気象学者や防災機関、再生可能エネルギーや物流といった天候に左右される産業にとって、GraphCastは「データ駆動型AIが物理シミュレーションを精度と速度の両面で凌駕できる」ことを証明した実用的なマイルストーンだ。これまで国家レベルのスパコンが必要だった大規模予測が、クラウドのAIアクセラレータ上で一瞬で動く。
もっとも、GraphCastは従来の物理モデルを完全に置き換えるものではない。高品質な学習データセット自体が、従来の観測と物理モデルの融合によって作られているためだ。当面は、物理モデルで観測データを整え、AIモデルが高速に予測を回すハイブリッド運用が現実解になるだろう。コードは手に入る状態にあるため、気象データ分析を手がける開発者や研究者は試す価値が十分にある。
情報源 (1)
- deepmind.google(新しいタブで開きます)原文deepmind.google