Google DeepMind、Gemini 1.5 Proでオフィスを案内するロボットの実験を公開
Google DeepMindは今週、Gemini 1.5 Proを活用してロボットを自律移動させる研究「Mobility VLA」を公開した。旧Everyday Robotsの機体が音声指示やホワイトボードの手描き地図を理解して案内し、50回以上のテストで約90%の成功率を記録した。
昨年の大規模な人員削減に伴い、Google がプロジェクトを終了させた自律型ロボット開発部門 Everyday Robots。その遺産となったハードウェアが、思わぬ形で再登板を果たしました。
Google DeepMind のロボティクスチームは今週、Gemini 1.5 Pro を頭脳として搭載したロボットが、約 9000 平方フィート(約 836 平方メートル)のオフィス内を自律案内するデモ動画と論文を公開しました。
新入社員のようにオフィスを散歩して空間を把握
チームが発表した論文「Mobility VLA」では、長文脈を扱えるビジョン言語モデル(VLM)とトポロジカルグラフを組み合わせ、ロボットに人間の意図を汲み取ったナビゲーションを行わせる手法が示されています。
空間の把握には MINT(Multimodal Instruction Navigation with demonstration Tours)と呼ばれる手法を採用しました。これは事前にエンジニアがロボットを連れてオフィスを歩き回り、ランドマークを声に出して説明するだけで完了します。高精度なフロアマップを一から作り込む必要はありません。
階層型の Vision-Language-Action(VLA)モデルが、環境の視覚情報と言語的な常識推論を結びつけることで、ロボットは音声指示だけでなく、手書きの図やジェスチャーまで理解できるようになります。
ホワイトボードの落書き地図を読み解く
公開された映像では、黄色い蝶ネクタイをつけたロボットに社員が「OK, Robot」と呼びかけ、タスクを依頼しています。
ある社員が「何か絵を描ける場所に連れて行って」と頼むと、ロボットは「Gemini で思考中」と数秒考えた後、壁一面の巨大なホワイトボードの前まで正確に案内しました。
さらに別のデモでは、社員がホワイトボードに手書きした簡略なルート案内をロボットに見せ、「この指示に従って進んで」と指示しました。ロボットは手描きの地図を視覚的に解釈し、ロボット実験エリアまで自力で経路を見つけて移動してみせました。Google によれば、50 回以上の対話テストにおいて約 90 パーセントの成功率を記録したとのことです。
なぜ重要か
この取り組みで最も興味深いのは、ロボットの高度な自律移動を、特化型のナビゲーションプログラムではなく汎用フロンティアモデルの「常識推論」で解かせた点にあると私たちは考えます。
従来の搬送ロボットは「絵を描く場所」といった曖昧な目的地を指示されても処理できませんでした。Gemini 1.5 Pro のようなマルチモーダルモデルを介することで、手描きのラフな地図を解釈したり、人間の曖昧な欲求を物理的な設備に翻訳したりすることが可能になります。これにより、オフィスや商業施設でのロボット導入ハードルは大幅に下がるはずです。
一方で課題も明確です。映像の中でもロボットが「少々お待ちください、Gemini で思考中です」と述べているように、思考に数十秒を要する応答遅延は、実運用環境ではストレスになり得ます。また 50 回程度の試行で成功率 90 パーセントという数字は、業務現場で完全に放置して運用するにはまだ頼りない水準です。
それでも、打ち切られた旧型ハードウェアに最新の大規模モデルを組み合わせるだけで、ここまで高度な文脈理解が可能になるという事実は、ロボット工学の重心が完全にソフトウェアと基盤モデルへ移行したことを物語っています。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com