有名人がAIで自身のデジタル分身を管理、本人が行かずに広告展開
無断のディープフェイクに対抗し、スターやモデルがAI企業と組んで公認の3Dアバターを作成し、ブランドのマーケティングに提供し始めている。ネイマールやエヴァ・ヘルツィゴヴァらが参加しており、本人が現場に出向かずに若返りや仮想ランウェイ登壇を実現できる点が注目されている。

セレブにとって長らく頭痛の種だったディープフェイクですが、いまやその技術を自ら武器に変える動きが広がっています。無断で画像を使われるのを待つのではなく、公式の「AIアバター」を作り、ブランド企業にライセンス提供して収益化し始めています。
AIスタートアップのMetaphysicを率いるTom Graham氏が言うように、セレブは「報酬を受け取りながら、現場に行く必要すらない」状態になりつつあります。スタジオで3Dスキャナーの前に数分立つだけで、無数の広告コンテンツを生成する元データが手に入るからです。
若返りからバーチャルランウェイまで
スポーツや広告業界ではすでに導入が進んでいます。
ナイキが5月31日に終了した会計年度で支払う契約金は13億ドルに達するなど、セレブのブランド提携は巨大ビジネスです。従来の契約では肖像権の一部をブランド側に委ねる必要がありましたが、デジタルクローンは本人の自由度を大きく広げます。
生身の人間には不可能な表現も可能になりました。2021年には、プロクター・アンド・ギャンブル傘下のジレットの広告で、元NFLスターのディオン・サンダース氏の1989年ドラフト指名当時の姿がAIで再現されました。現在83歳のゴルフ界の伝説、ジャック・ニクラス氏もSoul Machines社と組み、全盛期である38歳当時の姿を再現したAIアバターの制作に合意しています。
プーマは昨年のニューヨーク・ファッションウィークで、Epic Gamesの「MetaHuman」ツールを使ってサッカー選手ネイマールの3Dアバターを生成し、ランウェイと連動したバーチャルイベントで新商品を着せて登場させました。
ハリウッドの大手エージェンシーCAAも、Metaphysic社やSoul Machines社と提携し、所属タレントの権利保護とAI活用の支援に乗り出しています。Metaphysic社は、ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演の新作映画へのAI技術提供もすでに決めています。
ファッション界でも動きがあります。スーパーモデルのエヴァ・ヘルツィゴヴァ氏は、自身の歩き方や癖を再現したデジタルツインを発表しました。従来の写真と異なり、このアバターの権利はブランドではなく本人と所属事務所が保持しており、近くECサイト上で服を着こなすモデルとして導入される予定です。
なぜ重要か
私たちは、この動きを知的財産の防衛策として非常に賢明なステップだと考えています。
勝手に作られる悪質なディープフェイクを法的に取り締まり続けるのは現実的に困難です。それなら自ら「公式のマスターデータ」を作り、権利を保持したまま商用利用をコントロールするほうがはるかに合理的です。セレブにとっては、自分の物理的な稼働時間を切り売りするビジネスから、スケーラブルなIPライセンスビジネスへの転換を意味します。
ブランド側にとっても、撮影の手間やスケジュール調整を省略できるだけでなく、消費者の画面上でリアルタイムに接客させるなど、生身の人間では不可能なマーケティングが可能になります。Soul MachinesのCEOが語るように、リアルタイムの双方向対話は広告のあり方を大きく変えるはずです。
一方で、危うさも潜んでいます。いつでもどこでも本人の顔を呼び出せるようになれば、これまで有名人の価値を支えていた「希少性」は薄れます。また、トップスターが分身によって不労所得を得る一方で、実写の現場を支えてきたスタンドインや下積みモデルの雇用が真っ先に奪われる懸念は拭えません。
情報源 (2)
- wsj.com(新しいタブで開きます)原文wsj.com
- livemint.com(新しいタブで開きます)報道livemint.com
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