ByteDanceがSeedFoldを発表:計算効率と蒸留でAlphaFold 3超えを達成
ByteDance Seedチームが生体分子構造予測モデル「SeedFold」を発表した。Pairformerの幅を4倍に拡張し、計算量をO(n²)に抑える線形三角アテンションを採用、さらにAlphaFold 2から2650万件の構造を蒸留して学習データを147倍に拡大した。抗体・抗原結合など多くのタスクでAlphaFold 3を上回る。

SeedFoldは、ByteDanceのSeedチームが開発した生体分子構造予測モデルだ。タンパク質や複合体の三立体構造を高精度かつ高速に予測することを目的に設計されている。
標準のSeedFoldに加え、計算効率を高めた変体モデル「SeedFold-Linear」も用意されている。主要ベンチマーク「FoldBench」において、両モデルはほとんどのタンパク質関連タスクでAlphaFold 3を上回る成果を出している。
どうやって実現したか
チームはモデル性能のボトルネックを解消するため、3つのアプローチでスケーリングを敢行した。
1つ目はネットワーク幅の拡張だ。中心的なモジュールであるPairformerのチャンネル幅を、従来の128から512へと4倍に広げた。ペア表現の次元数こそが相互作用を捉える最大の鍵であり、メモリ制限や学習の不安定化といったエンジニアリング課題を乗り越えて幅を拡張した。
2つ目は注意機構の軽量化だ。従来の三角アテンションが持つO(n³)の計算量を、新開発の線形三角アテンションによってO(n²)へと削減した。通常の線形設計を取り入れたバージョンのほか、情報フローをゲート制御する設計も用意し、DNAやRNAのタスクで高い精度を発揮する。
3つ目は大規模なデータ蒸留だ。実験で得られる既知の構造データは限られているため、AlphaFold 2からの蒸留によって2650万件のデータセットを構築した。これにより、実験データ比で学習量を147倍に拡大している。
予測精度と性能
FoldBenchの検証結果では、各項目で強さを示している。
抗体・抗原(Ab-Ag)の相互作用タスクにおいて、SeedFoldの成功率は53.21%に達し、AlphaFold 3の47.90%、Boltz-1の33.54%、Chai-1の23.64%を大きく引き離した。
単体タンパク質(lDDT 0.8889対0.88)やタンパク質同士の複合体(74.03%対72.93%)でもAlphaFold 3を上回る。タンパク質とリガンドの結合では、計算負荷の低いSeedFold-Linearが66.48%を記録し、AlphaFold 3の64.90%を凌駕した。ただし、タンパク質とDNAの相互作用ではAlphaFold 3(79.18%)が依然リードしている。
また、同アーキテクチャを応用した全原子タンパク質設計拡散モデル「SeedProteo」も同時に発表されており、arXiv(2512.24354)と公式サイトで公開されている。
なぜ重要か
創薬や構造生物学の研究者にとって、SeedFoldはスケーリング則が生体分子モデリングでも強力に機能することを示した重要な実例だ。計算量をO(n²)に抑えたことで、より長大な分子や複合体のシミュレーション現実味が大幅に増した。
ゼロから実験データを待つのではなく、AlphaFold 2による2650万件の蒸留とモデル幅の拡張を組み合わせたアプローチは極めて合理的だ。研究パイプラインに今すぐ組み込めるかは、ウェイトやコードのオープン公開状況次第だが、オープンバイオインフォマティクス界隈にとって見逃せない選択肢になるだろう。
情報源 (1)
- seedfold.github.io(新しいタブで開きます)原文seedfold.github.io